人のせいにする人はアスペルガー(ASD)?謝らない・否定ばかりする理由と対処法

「職場の人が、ミスをすると必ず誰かのせいにする」
「夫は自分が悪くても謝らず、こちらの言うことを否定してばかりいる」
「自分でも言い訳が多いと分かっているのに、指摘されると反論してしまう」
このような経験から、「人のせいにするのはアスペルガー(ASD)の特徴なのだろうか…(?)」と疑問を持つ方もいるかもしれません。
先に結論として、人のせいにする、謝らない、否定ばかりするといった行動だけで、ASD(自閉スペクトラム症)とは判断できません。
ただし、ASDの特性によって相手との認識が食い違ったり、指摘された意図が伝わりにくかったりして、周囲から「責任逃れをしている」と受け取られることはあります。
一方で、失敗への恐怖や自分を守ろうとする気持ち、ストレス、職場環境など、ASDとは関係のない理由で同じような言動が生じる場合もあります。
この記事では、人のせいにする言動とASDの関係、否定や反論が多くなる背景、職場や家庭での接し方、自分の言動を見直す方法について解説します。
この記事のポイント
- 「人のせいにする」「謝らない」はASDの診断基準ではない
- ASDの特性による認識の違いが、責任逃れのように見えることがある
- 否定や反論が多い背景には、不安やストレス、過去の経験なども関係する
- 周囲の人は、人格ではなく具体的な出来事と行動に焦点を当てて話す
- 本人が対人関係や仕事で困っている場合は、専門家への相談も選択肢になる
人のせいにする人はアスペルガー(ASD)なのか?
「アスペルガー」という言葉は現在も広く使われていますが、現在の診断では一般にASD(自閉スペクトラム症)という名称が用いられています。
ASDは、対人コミュニケーションの特徴や、興味・行動の偏り、変化への対応の難しさなどがみられる神経発達症です。
ただし、特性の現れ方には大きな個人差があります。
ASDの方が全員、人のせいにするわけではありません。
また、人のせいにする人の多くがASDであるともいえません。
「他責思考」はASDの診断基準ではない
自分の失敗や問題の原因を、主に他人や周囲の環境に求める考え方は、一般に「他責思考」と呼ばれます。
たとえば、仕事でミスをしたときに
「上司の説明が悪かった」
「同僚が確認しなかったからだ」と考えることです。
しかし、他責思考は医学的な診断名ではなく、ASDの診断基準にも含まれていません。
また、ミスの原因が実際に不十分な指示や職場環境にある場合もあります。
そのため、相手が「指示が分かりにくかった」と話しただけで、責任転嫁と決めつけることも適切ではありません。
相談員大切なのは、誰が悪いかをすぐに判断するのではなく、何が起きて、どのような認識の違いがあったのかを確認することです。
【比較表】ASDの特性と一般的な他責思考の違い
| 比較する点 | ASDの特性が関係する場合の一例 | ASDとは無関係に起こる場合の一例 |
|---|---|---|
| 指摘されたとき | 指示の解釈が異なり、納得できない | 責任を認めたくなくて反論する |
| ミスの説明 | 出来事を正確に説明しようとする | 自分に不利な事実を避けようとする |
| 相手との認識 | 暗黙の了解や言外の意図が伝わりにくい | 相手の意見を受け入れたくない |
| やり方へのこだわり | 手順の変更に負担を感じる | 自分の方法を優先したい |
| 謝罪 | 何について謝るべきか分からない | 謝ると負けだと感じる |
※この表は行動の背景を考えるための例であり、ASDかどうかを判定するものではありません。実際には複数の要因が重なることもあります。
ASDの特性によって「人のせいにしている」と見える4つの理由
ASDの方の中には、物事の受け取り方やコミュニケーションの特徴によって、周囲との認識が食い違いやすい方がいます。
その結果、本人は状況を説明しているつもりでも、周囲には「言い訳をしている」「自分の非を認めない」と映ることがあります。
① 曖昧な指示を異なる意味で受け取っている
たとえば、上司から「この資料を早めに仕上げて」と頼まれた場面を考えてみましょう。
上司は「今日中に完成させてほしい」と考えていた一方、本人は「今週中でよい」と受け取っていたとします。
後から「どうして今日中に終わっていないの?」と指摘されたとき、本人は「今日中とは言われていません」と答えるかもしれません。
上司には反論や責任逃れに聞こえても、本人にとっては、実際に受け取った指示を説明しているだけという場合があります。
このような食い違いは誰にでも起こりますが、曖昧な表現の理解が難しい方では、特に問題になりやすいことがあります。
② 相手の意図や暗黙の了解を読み取りにくい
「普通は分かるでしょう」
「そこは自分で考えて」
「いい感じに調整しておいて」
こうした言葉は、話し手にとっては自然でも、受け手によって解釈が異なります。
ASDの方の中には、遠回しな表現よりも、具体的で明確な指示の方が理解しやすい方がいます。
本人は言われた通りに行動したつもりなのに、周囲から「違う」と指摘されれば、納得できずに反論することもあるでしょう。
③ 予定外の出来事や急な変更に混乱する
ASDの方の中には、予定や手順が急に変わることに強い負担を感じる方がいます。
決められた手順で仕事を進めていたのに、途中で突然やり方を変更するよう求められた場合、変更への対応だけで精いっぱいになることがあります。
その状態で強く指摘されると、うまく説明できず、反論するような言い方になってしまう場合もあります。
ただし、こうした反応がすべてASDによるものとは限りません。疲労やストレス、職場の人間関係なども影響します。
④ 事情を詳しく説明することが言い訳に聞こえる
ASDの方の中には、出来事を正確に伝えようとして、細かな経緯を詳しく説明する方もいます。
「最初にAさんからこう言われ、その後Bさんから別の指示がありました」
本人は事実関係を整理しているつもりでも、聞いている側は「自分の責任を認めず、周囲のせいにしている」と感じるかもしれません。



こうした場合は、説明を途中で遮って「言い訳するな」と叱るよりも、事実確認と今後の対応を分けて話す方が建設的です。
【図解】なぜ「責任逃れ」に見えるのか
職場でミスが起きた場合の一例
「この資料、早めに仕上げて」
「今週中でよい」と理解する
「今日中のつもりだったのに!」
「今日中とは言われていません」
上司は「言い訳している」と感じ、本人は「事実を説明している」と感じる
このように、最初の指示に対する認識が違うと、同じ出来事でも受け止め方が変わります。
ただし、すべての認識の食い違いがASDによるものではありません。


「否定ばかりする人」はアスペルガー(ASD)なの?
「何を言っても、まず『でも』『違う』と返される」
「こちらの意見を受け入れず、自分の考えを主張し続ける」
こうした言動から、ASDとの関係を疑う方もいるでしょう。
しかし、否定的な返答が多いことも、それだけではASDの特徴とは判断できません。


自分の考えと違うことを受け入れにくい場合
ASDの方の中には、物事の手順や考え方に強いこだわりを持つ方がいます。
自分の中で合理的だと考えている方法と異なる提案をされたとき、すぐには納得できない場合があります。
ただし、こだわりがあることと、他人の意見を尊重しないことは同じではありません。
なぜ変更が必要なのか、具体的な理由や手順を説明することで、理解しやすくなる場合があります。
否定しているつもりではなく、事実を訂正している場合
「昨日も同じことを言ったよね」
「いいえ、昨日ではなく一昨日です」
こうしたやり取りで、相手は「細かいことをいちいち否定される」と感じるかもしれません。
一方、本人は日付を正確に伝えようとしているだけかもしれません。
正確さを重視することが、必ずしも相手への攻撃や否定を意味するわけではないのです。



ただし、相手が傷ついたり、会話が続けにくくなったりしている場合は、伝え方を調整する必要があります。
不安や過去の経験から防御的になっている場合
何度も叱責されたり、誤解されたりした経験があると、指摘を受けた瞬間に身構えてしまうことがあります。
これはASDの方に限った話ではありません。
「また責められるのではないか」という不安から、相手の話を最後まで聞く前に否定や反論が出てしまうこともあります。
なぜ謝らない?「ごめんなさい」が出てこない理由
家族や職場の人からすると、相手が謝らないこと自体が大きなストレスになる場合があります。
何について謝るべきか分かっていない
仕事のミスについて注意されたとき、本人は「指示通りに進めた」と考えているかもしれません。
その場合、「自分が間違えた」と言われても納得できず、謝罪より先に事情を説明しようとすることがあります。
「今回の問題は、提出期限を確認しなかったことです」
というように、何が問題だったのかを具体的に伝えることで、認識を共有しやすくなります。
謝罪よりも原因の説明や解決を優先している
本人は「なぜ問題が起きたか」を説明することが重要だと考えていても、相手は「まず謝ってほしい」と思っている場合があります。
どちらも問題への向き合い方ですが、順番が違うために衝突することがあります。
「まず困ったことを理解してほしい。その後で原因を一緒に考えたい」と伝える方法もあります。
謝らない理由がASDとは無関係なこともある
謝罪によって自分の立場が弱くなると考える人や、責任を認めることに強い抵抗を感じる人もいます。
そのような言動を、すべて発達特性で説明することはできません。
また、ASDの診断があることは、暴言や責任転嫁など、相手を傷つける行為を正当化する理由にはなりません。
人のせいにする人への接し方|職場・家庭でできる対処法
相手にASDの特性があるかどうかにかかわらず、話し合いが毎回言い争いになる場合は、伝え方や対応方法を見直すことが役立ちます。
① 「あなたはいつも人のせいにする」と決めつけない
「あなたは絶対に謝らない」
「いつも責任逃れをする」
このように人格全体を評価する言葉は、相手を防御的にさせ、話し合いを難しくする場合があります。
代わりに、具体的な出来事について話しましょう。
「昨日の資料は、提出期限までに完成していませんでした」
「次回は、期限が分からなければ事前に確認してほしいです」
というように、事実と改善してほしい行動を分けて伝えます。
② 曖昧な指示を減らす
職場では、「早めに」「適当に」「いい感じに」といった言葉を避け、期限や手順を具体的に伝えると、認識の違いを減らしやすくなります。
「なるべく早く提出して」ではなく、
「木曜日の15時までに、A4で2ページの資料を提出してください」と伝えます。



必要に応じて、メールやチャットなど、後から確認できる形で残す方法もあります。
③ 事実確認と責任追及を分ける
問題が起きたときに、最初から「誰が悪いのか」を決めようとすると、互いに防御的になりやすくなります。
まずは何が起きたのかを整理し、その後で今後の対策を話し合う方が建設的です。
④ 暴言や威圧的な態度まで我慢する必要はない
相手に発達特性があるかもしれないと思うと、「こちらが理解してあげなければ」と考える方もいるでしょう。
しかし、理解することと、何をされても受け入れることは別です。
暴言、威圧、繰り返される責任転嫁などによって精神的な負担が大きくなっている場合は、距離を置いたり、第三者に相談したりすることも必要です。
【比較表】相手への伝え方を変える具体例
| 言い争いになりやすい言葉 | 伝え方の工夫 |
|---|---|
| 「何でいつも人のせいにするの?」 | 「今回の経緯を順番に確認したい」 |
| 「言い訳しないで」 | 「事情は分かったので、次の対策を考えよう」 |
| 「普通は分かるでしょう」 | 「この作業は金曜日までに終える予定でした」 |
| 「少しは相手の気持ちを考えて」 | 「その言い方をされると、私は責められたように感じる」 |
| 「何で謝れないの?」 | 「今回、私が困ったことを理解してほしい」 |
【チェックリスト①】周囲の人が確認したいこと
相手とのやり取りがうまくいかないときは、次の項目を確認してみましょう。
| 指示やお願いを、具体的な言葉で伝えている | |
| 相手がどう理解したか確認している | |
| 「いつも」「絶対に」など、決めつける言葉を避けている | |
| 事実確認と感情的な話し合いを分けている | |
| 必要に応じて、メールやメモなどで記録を残している | |
| 自分自身が無理をしすぎていない |
すべてにチェックがつく必要はありません。
できそうなことから一つずつ取り入れてみてください。
自分が人のせいにしてしまう場合は?改善するための考え方
ここまでは周囲の人への対応を中心に説明してきましたが、「自分もつい人のせいにしてしまう」と悩んでいる方もいるでしょう。
指摘された瞬間に反論してしまい、後から「言い方がよくなかった」と後悔することもあるかもしれません。





そのような場合は、自分を責めるよりも、どのような場面で反応が強くなるのかを整理してみてください。
反論する前に、一度確認する
相手から指摘されたときに、すぐに「でも」「だって」と返したくなる場合があります。
そんなときは、
「どの部分が問題だったか、もう一度確認してもいいですか」
と尋ねてみましょう。
指摘された内容を正確に理解することで、必要のない言い争いを減らせる場合があります。
事実と感情を分けて考える
「自分は悪くない」と感じたときも、少し時間を置いて、何が起きたのかを振り返ってみてください。
「上司の指示が曖昧だった」という事情があったとしても、
「自分から期限を確認することはできたかもしれない」と考えることはできます。
すべて自分の責任だと考える必要はありません。
相手側の問題と、自分が次に工夫できることを分けて整理することが大切です。
謝罪と自己否定を分ける
謝ることは、自分の人格や能力を否定することではありません。
「確認が足りませんでした。次回から気をつけます」という言葉は、今回の行動について責任を認めるものであり、自分自身を否定するものではありません。
【チェックリスト②】自分の反応を振り返る


次の項目は、ASDの診断や性格を判定するものではありません。自分の言動を振り返るための目安です。
| 指摘されると、最後まで聞く前に反論してしまう | |
| 「でも」「だって」という言葉が先に出やすい | |
| 失敗を認めることに強い不安がある | |
| 相手の説明と自分の理解が食い違うことが多い | |
| 後から考えると、言い方が強かったと思うことがある | |
| 同じような対人トラブルを繰り返している |



当てはまる項目があっても、それだけでASDや病気を意味するわけではありません。気になる場面があれば、どのような状況で起きたのかを振り返り、次にできる工夫を考えてみましょう。
ASDかもしれないと思ったら、精神科・心療内科に相談すべき?
人のせいにする、謝らない、否定ばかりするといった行動だけで、精神科の受診が必要になるわけではありません。
一方で、本人が対人関係や仕事で繰り返し困っていたり、強いストレスや不安を抱えていたりする場合には、医療機関への相談が役立つことがあります。
【早見表】相談を考えたい状況
| 状況 | 相談の考え方 |
|---|---|
| 時々、意見が食い違う程度 | まずは伝え方や環境を調整する |
| 同じ対人トラブルを繰り返す | 困りごとの背景を整理し、必要に応じて相談する |
| 仕事や家庭生活に大きな支障が出ている | 医療機関や相談機関への相談を検討する |
| 幼少期から対人関係や集団生活で困りごとが続いている | 発達特性について専門家に相談することも選択肢 |
| 不眠、強い不安、抑うつなどが続いている | 精神科・心療内科などに相談する |
ASDの診断では、現在の困りごとだけでなく、幼少期からの発達歴や生活状況なども確認します。
また、ASD以外の要因が関係している場合もあるため、自己判断で診断名を決めつけないことが大切です。



家族や職場の人について心配している場合も、本人を無理に「発達障害だ」と説得するのではなく、具体的に何に困っているのかを整理することから始めましょう。
よくある質問
- 人のせいにする人は、発達障害の可能性が高いですか?
-
人のせいにするという行動だけでは、発達障害の可能性が高いとは判断できません。ASDの診断には、幼少期からの発達歴や対人コミュニケーションの特徴、行動の特性など、幅広い情報が必要です。
- アスペルガー(ASD)の人は謝るのが苦手ですか?
-
ASDの方が全員、謝罪を苦手とするわけではありません。ただし、何について謝罪を求められているのか分かりにくい場合や、原因の説明を優先する場合などに、周囲との認識が食い違うことはあります。
- 否定ばかりする夫はASDなのでしょうか?
-
否定的な発言が多いことだけでASDとは判断できません。性格、ストレス、夫婦間のコミュニケーション、これまでの経験など、さまざまな背景が考えられます。まずは具体的な言動と、それによって生じている問題を整理することが大切です。
- ASDの特性による言動は改善できますか?
-
ASDそのものを性格の問題として「直す」という考え方は適切ではありませんが、コミュニケーションの工夫や環境調整によって、行き違いや生活上の困難を減らせる場合があります。本人の困りごとに合わせて支援方法を考えることが大切です。
- 自分が人のせいにしてしまうのは病気ですか?
-
人のせいにしてしまうこと自体は病気ではありません。ただし、その背景に強い不安やストレス、対人関係の難しさなどがある場合もあります。生活や仕事に支障が出ている場合には、専門家に相談することも選択肢です。
まとめ|「人のせいにする=ASD」と決めつけず、背景と困りごとに目を向ける
人のせいにする、謝らない、否定ばかりするといった言動は、ASDの診断基準ではありません。
ただし、ASDの特性によって相手との認識が食い違い、周囲から責任逃れや反論と受け取られることはあります。
一方で、失敗への恐怖、ストレス、性格、職場環境など、ASDとは関係のない要因が背景にある場合もあります。
大切なのは、相手を診断名で判断することではなく、具体的に何が起きていて、どのような工夫や支援が必要なのかを考えることです。
周囲の人は、事実を整理し、具体的な言葉で伝えることを意識してみてください。
また、本人が対人関係や仕事で繰り返し困っている場合には、精神科・心療内科などに相談することも選択肢になります。
【免責事項】
本記事は医療機関による情報提供を目的としており、個別の症状の診断・治療を代行するものではありません。
ご自身の症状については、必ず医師・医療機関にご相談ください。





