ADHDとASDの違いと併存時の生きづらさ|診断基準・対処法を医師が解説

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「職場でのミスが多い」「人間関係がうまくいかない」――こうした困りごとの背景には、ASD(自閉スペクトラム症)ADHD(注意欠如多動症)の特性があるかもしれません。

長年「努力不足」と感じてきた方も、実は脳の特性によるものである可能性があります。

この記事では、ASDとADHDの違い見分け方・両方の特性を持つ併存時の対応まで、図や表を使ってわかりやすく解説します。

ASDとADHDの違い

ADHDは注意散漫・多動・衝動性など「行動面」の課題が中心、ASDは対人コミュニケーションの困難・強いこだわりなど「対人・感覚面」の課題が中心です。 

ただし、成人の発達障害の約27-30%は両方の特性を併せ持っており、特性に応じた専門的な診断と支援が重要になります。

ポイントは以下の3つ。

同じ困りごとでも原因が異なる
「ミスが多い」場合、ADHDでは注意散漫、ASDでは暗黙のルールが分からないことが原因

約27〜30%に両方の特性がある
特性が重なることで葛藤が生まれやすく、単独の場合よりも深刻な悩みや二次障害(うつ・不安)に繋がりやすいのが特徴。

本人の「努力不足」ではなく「脳の特性」
診断を受けることで自己理解が進み、特性に合った支援や対処法を選べるようになる


【受診の目安】
・仕事や学業で繰り返しミスが改善できず、評価や人間関係に影響が出ている

・対人関係で頻繁にトラブルが起き、孤立感を抱えている

・抑うつ状態や強い不安があり、日常生活に支障が出ている

「死にたい」「自分を傷つけたい」と感じるなら、原因探しより先に精神科・心療内科の受診を。

特性による生きづらさが積み重なり、二次障害(うつ病などの別の不調)を併発している可能性があります。あなたが悪いのではなく、心のSOSです。


目次

ASDとADHDの基本的な違い|2つの軸で理解する

ADHDとASDの違いを分かりやすく図解で説明。

ADHDは「注意が散漫」「じっとできない」など行動面の課題が中心で、ASDは「相手の気持ちが読めない」「変化が苦手」など対人・感覚面の課題が中心です。 

ただし、日本の成人(20〜70歳)の発達障害者838名を対象とした研究では、ASDとADHDを併せ持つ人は26.8%と報告されており(※)、両方の特性を持つ人も珍しくありません。

項目ADHD(注意欠如多動症)ASD(自閉スペクトラム症)
主な特徴不注意、多動性、衝動性対人コミュニケーションの困難、強いこだわり
注意の傾向全般的に注意が散漫、集中が続かない特定の事柄に過度に集中(過集中)、興味の偏り
行動じっとしていられない、衝動的な言動こだわりが強く、ルーチンを重視、変化が苦手
コミュニケーション衝動的に話す、会話を遮る相手の気持ちや場の空気を読み取るのが苦手
整理整頓散らかしたまま放置、忘れ物が多い本人なりの規則性があるが、空間認識が苦手な場合も
感覚特性刺激に気が散りやすい音・光・触覚などへの過敏または鈍麻

この表だけで判断せず、次の「生活場面別の見分け方」でご自身の特性を確認してみてください。

ADHDとASDの基本的な解説は以下をご覧ください。

H2-2:【生活場面別】あなたはどちらのタイプ?具体的な見分け方

ADHDとASDの具体的な見分け方を比較図で示した

同じ「仕事でミスが多い」でも、ADHDは注意散漫が原因ASDは暗黙のルールが分からないことが原因のケースが多いです。

 以下の場面別チェックで、ご自身の特性がどちらに近いか確認してみましょう。

場面ADHDタイプASDタイプ
職場・仕事締切を守れない、ケアレスミスを繰り返す、優先順位がつけられない暗黙のルールが分からない、急な予定変更でパニック、マニュアル外の対応が苦手
対人関係
コミュニケーション
衝動的に話を遮る、約束を忘れる、話しすぎてしまう冗談や皮肉が通じない、一方的に話し続ける、相手の表情が読めない
日常生活物をよくなくす、時間管理ができない、片付けが苦手(散らかしっぱなし)予定変更に強く抵抗する、特定の音や匂いが耐えられない、片付けが苦手(自分なりのルールがある)

両方に当てはまる場合は、ASDとADHDが併存している可能性があります。


両方の特性がある?ASD・ADHD併存(混合型)の見分け方

「どちらの特性も当てはまる」と感じるのは、決して珍しいことではありません。

併存の割合と実態|「4人に1人」が両方の特性を持っている

日本の成人(20〜70歳)の発達障害者838名を対象とした研究では、26.8%(約4人に1人)がASDとADHDを併せ持っていると報告されています。

特性が重なると、アクセル(衝動性)とブレーキ(こだわり)を同時に踏むような「独特の生きづらさ」が生じ、二次障害(うつ・不安)のリスクも高まるため、まずは自分のパターンを知ることが大切です。

併存している場合の4つの葛藤パターン

パターン具体例対処のヒント
過集中と注意散漫の同居興味があることは何時間も集中するが、苦手なことは5分も続かない興味と実務をリンクさせる工夫、タイマー活用
衝動性とこだわりの矛盾衝動的に予定を変えたいのに、こだわりで変更できずストレスどちらが優位か見極め、優先順位をつける
対人トラブルの複雑化衝動的発言+空気が読めない → 二重に誤解される事前に伝え方をメモ、話す前に一呼吸
二次障害リスクの上昇単独より生きづらさが強く、うつ・不安が併発しやすい二次障害の治療を優先、専門医に相談

併存時の判断方法|どちらの特性が主か見極める

併存している場合、「どちらの特性がより強く困りごとを引き起こしているか」を医師がが見極めます。 

主となる特性に応じて治療や支援の優先順位が変わるため、自己判断ではなく精神科・心療内科での診断が重要です。

今雪院長

診察では「ADHDとASD、どちらですか?」と聞かれることがあるのですが、実際には両方の特性が重なっているケースが少なくありません。

大切なのは「どちらか」を決めることよりも、「どの困りごとから対処するか」の優先順位を一緒に考えることです。

ASD/ADHD 二次障害(うつ病・不安障害)のリスクと対応

ASD/ADHDでは、長年の生きづらさや対人トラブルの積み重ねから、二次的に精神疾患を発症しやすくなります。

ASDの約70%ADHDの約50% が何らかの精神疾患(うつ病、不安障害、適応障害など)を併存しているという報告があります

・二次障害がある場合は、まずそちらの治療や環境調整を優先します。

・二次障害が改善してから、発達障害の特性への対応を進めるのが一般的な流れです。


ADHD・ASDの診断基準の違いと受診の目安

ADHDとASDは、似た困りごとでも原因が異なるため、自己判断ではなく精神科・心療内科での専門的な診断が必要です。 

診断を受けることで、適切な支援や職場での合理的配慮につながります。

比較項目ADHD
(注意欠如・多動症)
ASD
(自閉スペクトラム症)
評価の主軸行動の制御(不注意・多動・衝動性)社会性とこだわり(対人交流・感覚)
発症時期の定義12歳以前から存在していること早期発達期から認められること
場面の条件2箇所以上(家庭と職場など)で支障複数の状況で持続的に認められること

ADHDの診断基準(DSM-5)のポイント

主な特性(不注意・多動性・衝動性)

  • 不注意(ミスの多さ)
    • ケアレスミス、集中力の欠如、片付けが苦手、物をなくす。
    • 指示に従えない、最後までやり遂げられない。
  • 多動性・衝動性(落ち着きのなさ)
    • じっとしていられない、話しすぎる、順番が待てない。
    • 他人の邪魔をしてしまう、思いついたらすぐ行動する。
ADHD 診断の必須条件はこちら

持続期間: 症状が6か月以上、発達段階に不相応な程度に持続している。

発症時期: 不注意または多動・衝動性の症状が12歳以前から存在している。

場面の数: 家庭・学校・職場など、2つ以上の場面で支障が出ている。

支障の程度: 学業・職業・社会的な機能に明らかな支障をきたしている。

項目数: 17歳以上の成人の場合、不注意・多動のそれぞれ5項目以上の該当が目安。

ASDの診断基準(DSM-5)のポイント

主な特性(対人交流・こだわり)

  • 対人交流の困難さ
    • 視線が合わない、表情が硬い、場の空気を読むのが難しい。
    • 双方向の会話が成立しにくい、非言語的な合図(身振りなど)を理解しにくい。
  • こだわりと感覚の偏り
    • 特定の手順や習慣への強い固執(ルーチンを好む)。
    • 特定の物事への限定的で強い関心。
    • 光・音・肌触りなどに対する過敏さ、または鈍感さ。
ASD 診断の必須条件はこちら

持続期間: 特性は持続的であり、成人後も状況に応じて(代償戦略で隠れていても)認められる。

発症時期: 幼少期(早期発達期)から症状が存在している(社会的要求が高まるまで表面化しないこともある)。

場面の数: 複数の場面(職場・家庭など)において、一貫して症状が見られる。

支障の程度: 社会的・職業的、または現在の重要な領域で機能に重大な支障がある。

除外診断: 知的能力障害や全般性発達遅滞ではうまく説明できない。

これら2つは以前の診断基準(DSM-IV)では「併記できない」とされていましたが、現在のDSM-5では「両方の診断を同時に下す」ことが認められています。

高い併存率は、この診断基準の変更によって、より実態に即した評価ができるようになった結果でもあります。

受診を検討すべき5つのサイン

以下に当てはまる場合は、精神科・心療内科への受診を検討してください。

・仕事や学業で繰り返しミスをして改善できず、評価に影響が出ている

・対人関係で頻繁にトラブルが起き、孤立感を抱えている

・時間管理や優先順位づけができず、締切を守れない

・周囲から「空気が読めない」「落ち着きがない」と繰り返し指摘され人間関係に影響がある

抑うつ状態や不安が強く、上記により日常生活に支障が出ている(二次障害の可能性)

診断を受けるメリット|「努力不足」から解放される

診断を受ける最大のメリットは、長年の生きづらさが「努力不足」ではなく「脳の特性」であると理解できることです。

自分を責め続けてきた方にとって、この理解は自己肯定感の回復につながります。

また、診断によって障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を職場に求めやすくなるなど、具体的な支援の選択肢も広がります。

診断テストやセルフチェックの限界と正しい使い方

・ネット上の診断テストは参考程度に留めてください。これらは医学的な診断ツールではありません

・確定診断には医療機関での問診・診察・心理検査(WAIS-IVAQ日本語版など)が必要です

・セルフチェックは「受診すべきか」を判断する材料として活用し、最終的には専門医に相談しましょう

当院でもWAIS-IVの検査が可能です。


知っておきたい相談先一覧

発達障害者支援センター
診断前でも相談可能。各都道府県に設置。
生活上の困りごとへのアドバイス、医療機関の紹介など

精神科・心療内科
診断・治療を行う医療機関。
初診は予約が必要なことが多いため、早めに確認しましょう

ADHDとASDの治療・対処法の違い|特性に合わせたアプローチ

ADHDとASDのアプローチの違いを比較図にしたもの

ADHDは薬物療法と行動療法が中心、ASDは環境調整とコミュニケーション支援が中心です。

 併存の場合は両方のアプローチを組み合わせ、個々の困りごとに応じて優先順位をつけます。

項目ADHDASD
中心的
アプローチ
薬物療法+行動療法環境調整+コミュニケーション訓練
薬物療法コンサータ、ストラテラ、インチュニブなど併存症状(不安・うつ)への薬物療法(ASD自体の薬はない)
環境調整タスク管理ツール、リマインダー、優先順位の見える化予測可能なスケジュール、刺激の軽減、ルーティン化
スキル訓練タイムマネジメント、衝動コントロールSST(ソーシャルスキルトレーニング)、感情理解
併存時どちらの特性が主かを見極めて優先順位をつける相反する特性(過集中と注意散漫など)への個別対応

今すぐできる対処法(6つ)

対処法を知っておくことは、生きづらさを解消するために有効です。

困りごとを具体的にメモする
いつ・どこで・どんな場面で困るかを記録し、受診時の参考にする

生活リズムを整える
睡眠・食事の時間を固定し、脳の負担を減らす

タスクを細分化する
大きな作業を小さなステップに分け、達成感を積み重ねる(ADHD傾向向け)

予定を事前に知る工夫
 カレンダーやリマインダーを活用し、急な変化のストレスを減らす(ASD傾向向け)

理解者を増やす:
信頼できる職場の上司や家族に状況を共有する

発達障害者支援センターに相談する
 診断前でも利用可能で、生活上のアドバイスが受けられる

ASD/ADHD 職場での合理的配慮の具体例

障害者雇用促進法に基づき、企業は合理的配慮を提供する義務があります。

ASD向けの配慮
・指示を口頭だけでなく文書で明文化する

・予定変更は可能な限り事前に伝える

・感覚過敏に配慮(蛍光灯をLEDに変更、ノイズキャンセリングイヤホンの使用許可など)

ADHD向けの配慮
・タスクの優先順位を明確に指示する

・リマインダーやスケジュール管理ツールの使用を許可

・静かな作業スペースの提供(気が散る刺激を減らす)

ASDの職場での対処については、以下の記事でくわしく解説しています。

ADHDとASDの違い|よくある質問(FAQ)

Q. ADHDとASDの特徴の違いは?

ADHDは「注意散漫・多動・衝動性」など行動面の課題が中心、ASDは「対人コミュニケーションの困難・強いこだわり」など対人・感覚面の課題が中心です。 

同じ「ミスが多い」でも、ADHDは注意が続かないことが原因、ASDは暗黙のルールが読み取れないことが原因であるなど、背景が異なります。

ADHDとASDは併存する?併存だと生きづらい?

はい、併存します。また、単独より生きづらさが増す傾向があります。

発達障害のある成人の約27%がASDとADHDの両方の特性を持つという報告があります。

「新しい刺激を求めるADHD」と「変化を嫌うASD」のように、自分の中に矛盾する特性が共存するため、心身の消耗が激しく、うつや不安障害などの二次障害を招きやすいのが特徴です。

ただし、医師の見極めの元、特性に合った支援や環境調整を行うことで生きづらさの軽減が期待できます。

ASDとADHDはどう判断する?

自己判断は困難で、精神科・心療内科での専門的な診断が必要です。 

医師による問診に加え、心理検査(WAIS-IVなど)を組み合わせて総合的に判断します。ネット上のセルフチェックは参考程度にとどめてください。

アスペルガーとASDの違いは?

呼び方が変わっただけで、現在はどちらも「ASD」です

昔の呼び名: アスペルガー症候群
今の正式名称: ASD(自閉スペクトラム症)

かつては知的発達や言語発達に遅れがない場合を「アスペルガー症候群」と呼んでいましたが、現在はすべてASDというひとつのグループに統合されました。

まとめ|自分の特性を理解し、適切な支援を受けよう

今回は、ADHDとASDの違いについて解説しました。

ASDとADHDの違い まとめ

ADHDは行動面(不注意・多動・衝動性)、ASDは対人・感覚面(コミュニケーション困難・こだわり・感覚過敏)が中心的な課題

同じ困りごとでも原因が異なるため、特性に応じた理解と対処が必要

発達障害のある成人の約27〜30%がASDとADHDを併存しており、両方の特性を持つことは珍しくない

自己判断ではなく、精神科・心療内科での専門的な診断を受けることで、適切な支援につながる

・自分が悪い」ではなく「脳の特性」と理解することが、自己肯定感の回復への第一歩

「自分はASDなのかADHDなのか」と悩んでいる時点で、あなたはすでにご自身の特性と真剣に向き合おうとしています。

生きづらさの原因は努力不足ではなく、脳の特性によるものかもしれません。

ひとりで抱え込まず、まずは専門の医師に相談してみてください。

当院は埼玉県のJR川口駅東口から徒歩2分、20歳以上の成人の発達障害診断に対応しています。

あなたらしく生きるための方法を、一緒に考えていきましょう。



【免責事項】
本記事は医療機関による情報提供を目的としており、個別の診断・治療を代行するものではありません。ご自身の症状については、必ず医師・医療機関にご相談ください。

📗 診断基準・ガイドライン
・American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (5th ed.). DSM-5.

📗日本の制度・公的情報
厚生労働省
「発達障害の理解~メンタルヘルスに配慮すべき人への支援~」(PDF)
厚生労働科学研究費補助金 障害者政策総合研究事業「成人の発達障害に合併する精神及び身体症状・疾患に関する研究」(2019年)PDF
障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象(PDF)

国立障害者リハビリテーションセンター
発達障害者支援センター一覧

埼玉県
埼玉県発達障害支援センターまほろば
 19歳以上の発達障害のある方、その
疑いのある方、そのご家族、発達障害者支援に関わる機関の支援者の相談
 (さいたま市に在住の方は「さいたま市発達障害者支援センター」)

📚 参考文献(一次情報・レビュー)
注意欠陥多動性障害(ADHD)または/および自閉症スペクトラム障害(ASD)を伴う新たに診断された成人における生涯同時発生する精神障害(2020)。

成人の発達障害に合併する精神及び身体症状・疾患に関する研究(※1)


【この記事の監修医】
 今雪 宏崇
(精神科医・川口メンタルクリニック院長)

地域のメンタルヘルス支援に携わる。
外来診療に加え、訪問診療にも注力し、通院が難しい方へのサポートも行っている。

▶ 詳しいプロフィールは 院長紹介ページ をご覧ください。

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