自閉症スペクトラム障害の診断方法とは?特徴や原因、治療・対処法まで解説

自閉症スペクトラム障害は、対人関係が苦手だったり、強いこだわりがあったりする特徴を持つ発達障害の1つです。幼児期から、自閉症スペクトラム障害の症状は現れる場合があり、早いと1歳半頃から可能性を指摘されることもあります。

特に、自閉症スペクトラム障害は、その特徴ゆえに社会生活に馴染めないケースが発生しやすく、さまざまな側面からのサポートが必要になることも少なくありません。この記事では、自閉症スペクトラム障害について詳しく解説します。

目次

自閉症スペクトラム障害の特徴

自閉症スペクトラム障害の主な特徴は、以下のようなものが挙げられます。

  • 視線が合わない
  • 表情が乏しい
  • 名前を呼んでも振り向かない
  • 独り言が多い
  • 親の後追いをしない
  • オウム返しをする
  • 触られたり、抱っこをされたりするのを嫌がる
  • 一人遊びが多い
  • 食べ物の好みが激しい
  • 特定の手順を繰り返す
  • 常同的な動作を繰り返す
  • 非言語的なコミュニケーションの意味を察するのが苦手
  • 人の気持ちを推し量れない

上記のような特徴が、自閉症スペクトラム障害の人には多く見られます。特に、非言語的なコミュニケーションが非常に苦手で、年齢を重ねるに従って、他者との関わりの中で対人関係における不具合が生じやすくなります。

自閉症スペクトラム障害の原因

自閉症スペクトラム障害の原因は、現段階では確実な理由が分かっていません。しかし、先天的な脳の機能障害によって、自閉症スペクトラム障害が引き起こされているのではないかと考えられています。

また、遺伝が発症の原因に絡み合っているなど、さまざまな要因も推測されています。ただ、親の育て方やしつけが影響することはありません。

自閉症スペクトラム障害の診断方法について

自閉症スペクトラム障害の疑いがあるかどうかは、当事者の様子を観察したり、心理検査を実施したりすることが診断の助けとなります。それぞれの方法について、詳しく見て行きましょう。

1.診察や面談・観察

主治医の診察や専門スタッフによる面談・観察が自閉症スペクトラム障害への理解を促してくれるケースは多々あります。例えば、主治医が診察の中で当事者の家族など身近な人から家庭や学校、職場での様子などを聞き取ることで診断が進めやすくなることもあるでしょう。また、当事者自身の様子や行動の観察をすることによって、明確な判断を検討する機会が与えられます。

2.心理検査の実施

心理検査は、客観的に当事者の発達水準や行動傾向などを測定・評価する検査のことです。心理検査は、1つの種類のみを行うことは少なく、さまざまな検査を併用し、総合的に判断したうえで自閉症スペクトラム障害の診断がなされます。

主に、臨床現場で実施されている自閉症スペクトラム障害の心理検査には以下のようなものがあります。

ウェクスラー式知能検査(WAIS)

ウェクスラー式知能検査(WAIS)は、16歳0か月~90歳11か月までの人が対象となっており、全検査IQに加え「言語理解」と「知覚推理」、「ワーキングメモリー」と「処理速度」の4つの指標によって、当事者の得意不得意を見ていきます。

1939年刊行のウェクスラー・ベルビュー知能検査を起源とするもので、70年以上の歴史を持つ知能検査と言われています。障害によって、結果に一定の傾向が見られるのが特徴の1つで、知的障害・発達障害の診断材料の1つとして用いられることの多い検査です。

参考URL

https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/wais4.html
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2013/133081/201317050B/201317050B0002.pdf

AQ(日本語版自閉症スペクトラム指数)

AQは、個人の自閉症傾向を測定する目的で用いられる検査の1つです。「社会的スキル」と「注意の切り替え」、「細部への注意」と「コミュニケーション」、「想像力」という5つの項目があり、全て自閉症スペクトラム障害の傾向を理解するためのものとなっています。ただ、AQはあくまで個人の自閉症傾向を把握するものであり、この結果だけで自閉症スペクトラム障害と診断されることはありません。

CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales)

CAARSは、18歳以上を対象とした注意欠如・多動性障害の症状重症度を把握するための評価尺度ですが、自閉症スペクトラム障害の診断の参考にも用いられています。検査は本人が答える「自己記入式」と、家族や友人など近しい関係性である人が答える「観察者評価式」があり、複数の回答者からの情報をもとに包括的に評価が行われます。

自閉症スペクトラム障害に効果的な治療・対処法とは

次に、自閉症スペクトラム障害の効果的な治療・対処法についてお伝えします。治療方法や対処法は、以下の「薬物療法」と「心理療法(カウンセリング)」、「就労移行支援施設の利用」が挙げられます。

ただ、当院では20歳以上の方が対象です。自閉症スペクトラム障害を疑って診察を受けたい方や心理検査、カウンセリングをご希望の方をお受けしています。

1.薬物療法

自閉症スペクトラム障害は、根本的な治療が可能な薬は未だ存在しません。しかし、自閉症スペクトラム障害の特徴や症状によって、当事者が抱えている問題に対処療法として、薬物療法が用いられる場合があります。

例えば、うつ状態や不安感を抱えているなどの際には、症状の度合いや当事者の辛さに応じて、抗うつ薬や抗不安薬などが処方され、症状の改善を目指します。

2.心理療法(カウンセリング)

自閉症スペクトラム障害は、薬物療法での完治は見込めないため、主にカウンセリングに重きを置くことがめずらしくありません。カウンセリングでは、カウンセラーが当事者の話をじっくりと聴き、気持ちを受け止めながら彼らの行動や考え方をより良い方向に導き、サポートして行きます。そうすることで、当事者自身も成長し、自己実現に近づきます。

3.就労移行支援施設の利用

就労移行支援施設は当事者が一般企業への就職を希望している場合に、支援の1つとして提供できるものです。

具体的には、履歴書の書き方や面接の際の言葉遣いの練習、対人関係のマナーやコミュニケーションの取り方などを学びます。一定期間の訓練後、就職しても問題ないと判断されると実際に求人へ応募をしたり、面接を受けたりする段階へ進みます。

また、就労移行支援施設の利用は、主治医と話し合いの上で行うことおすすめします。なぜなら、自閉症スペクトラム障害は、1つの要素だけではなく、社会生活におけるさまざまな困難があるため、当事者の傾向をしっかりと把握している主治医の指導やアドバイスも非常に重要となるからです。一般企業への就職に向けて、必要な訓練を重ねつつ、障害の特徴や当事者の苦痛が増幅しないように注意する必要があります。

自閉症スペクトラム障害は個人差が大きい点に配慮する

自閉症スペクトラム障害は、発達障害の中でも非常に個人差が大きいという特徴があります。同じ自閉症スペクトラム障害でも、人によって自閉症スペクトラム障害の特徴が全体的に出ている人もいれば、一部の特徴しか目立たないという人もいます。そのため、症状の現れ方によっては、自閉症スペクトラム障害だと気づかないまま大人になってしまうケースもあるのです。

自閉症スペクトラム障害の傾向は、幼い頃は特に見つけづらいことがあります。しかし、少なからず障害の特徴が現れている場合もあるため、家族などの周囲の人が早めに気づくことが重要です。ただし、社会生活においては、自閉症スペクトラム障害と一括りにせず、1人ひとりに沿った配慮が必要な障害だと言えます。

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