双極性障害でも仕事は続けられる?働き方・職場で気をつけたいことを解説

「双極性障害と診断されたけれど、このまま仕事を続けられるのだろうか」
「調子が良いときは働けるのに、急に何もできなくなる」
「転職を繰り返していて、自分には仕事が向いていないのではと思ってしまう」
双極性障害(双極症)のある方にとって、仕事との付き合い方は大きな悩みの一つです。
双極性障害では、気分が高揚して活動性が高まる躁状態・軽躁状態と、
気分が落ち込み活動性が低下するうつ状態がみられます。
そのため、仕事への影響も「いつも同じように働けない」という形で現れることがあります。
調子が良い時期には仕事を抱え込み、残業も苦にならない。
それなのに、しばらくすると朝起きることさえ難しくなり、出勤できなくなる。
こうした経験を繰り返すと、「自分は仕事が続かない人間なのではないか」と考えてしまう方もいます。
しかし、双極性障害があるから仕事ができないわけではありません。
大切なのは、調子の良い日にどれだけ働けるかだけで仕事を考えないことです。
気分の波があることを前提に、長く続けられる働き方を考えていく必要があります。
この記事では、双極性障害が仕事にどのような影響を与えるのか、仕事を続けるためにどのような点に気をつければよいのか、休職・復職や転職を考えるタイミングについて解説します。
双極性障害では仕事にどんな影響が出る?
双極性障害の仕事への影響を考えるとき、「うつ状態」だけに目を向けないことが大切です。
うつ状態では、仕事に行けなくなったり、集中できなくなったりするため、周囲も本人も不調に気づきやすくなります。
一方、躁状態や軽躁状態では、本人自身が「調子が良い」と感じていることがあります。
むしろ仕事が以前よりできているように感じる場合もあります。
この違いが、双極性障害と仕事を考えるうえで難しいところです。
うつ状態では「仕事ができなくなる」ことがある
うつ状態になると、朝起きることが難しくなったり、強い疲労感が続いたりすることがあります。
以前なら30分で終わっていた仕事に何時間もかかる。文章を読んでも内容が頭に入らない。簡単な判断にも時間がかかる。
こうした変化がみられることもあります。
さらに、「周りに迷惑をかけている」「自分は仕事ができない」と自分を責める気持ちが強くなることもあります。
この状態で無理に仕事を続けようとすると、さらに心身が消耗してしまうことがあります。
躁状態・軽躁状態は「仕事ができるようになった」と感じやすい
反対に、躁状態や軽躁状態では活動性が高くなります。
睡眠時間が短くても平気に感じたり、次々とアイデアが浮かんだり、人との会話が増えたりすることがあります。
仕事でも、「今なら何でもできそう」と感じることがあります。
一見すると良い変化に見えます。
しかし、ここには注意が必要です。
仕事を必要以上に引き受ける、長時間残業をする、大きな企画を突然始める、上司の了承を得ずに判断する、職場で話し続けるといった行動につながることがあります。
本人は「絶好調」と感じているため、ブレーキをかけることが難しい場合もあります。
そして、その時期に増やした仕事を、気分が落ちた後も抱え続けることになります。
双極性障害で「仕事が続かない」と感じる理由
双極性障害の方の中には、「転職しても長く続かない」「数か月は頑張れるけれど、その後休んでしまう」と悩む方がいます。
もちろん、すべてが病気によるものではありません。
職場環境、人間関係、仕事内容など、一般的な仕事の問題も関係します。
ただ、双極性障害の場合は、気分の波によって働き方そのものが変化していることがあります。
たとえば、軽躁状態のときに仕事量を増やす。
残業する。休日にも仕事をする。睡眠時間を削る。しばらくすると疲労が蓄積し、気分が大きく落ち込む。仕事に行けなくなる。そして休職や退職をする。
回復すると、「今度こそ頑張ろう」と再び仕事を詰め込む。
こうした流れを繰り返している場合には、仕事内容だけでなく、調子が良い時期の働き方を見直す必要があります。
「調子が良いときに頑張りすぎない」が意外と大切です
双極性障害の仕事について考えるとき、うつ状態への対策は比較的分かりやすいでしょう。
「無理をしない」「休養する」と考えられます。
難しいのは、調子が良いときです。
本人としては、「ようやく元気になった」と感じています。
そのため、遅れていた仕事を一気に取り戻そうとしたり、新しい仕事を引き受けたりすることがあります。
しかし、双極性障害では、活動量や睡眠時間の大きな変化が気分の波に影響することがあります。
調子が良いから100%、120%で働くのではなく、70~80%くらいでも安定して続けられる働き方を考えることが重要です。
「今日はまだ働けるけれど、予定通り帰る」
「仕事が進んでいても、いつもの時間に寝る」
こうしたブレーキをかけることも治療の一部と考えるとよいでしょう。
双極性障害で仕事を続けるなら「睡眠」を軽く考えない
仕事を続けるうえで、特に大切なのが睡眠です。
双極性障害では、睡眠時間の変化が気分の変化と関連することがあります。
「最近4時間しか寝ていないのに全然眠くない」「夜中まで仕事をしているのに元気」という状態は、単に調子が良いだけではなく、軽躁状態の兆候である可能性があります。
本人にとっては苦痛がないため、見過ごされやすい変化です。
そこで、毎日の睡眠時間を簡単に記録しておく方法があります。
気分だけではなく、「何時間寝たか」「何時に寝たか」を見ることで、自分の変化に早めに気づけることがあります。
夜勤や交代勤務など、生活リズムが大きく変化する働き方については、病状によって慎重に検討した方がよい場合もあります。
双極性障害に「向いている仕事」はある?
インターネットでは、「双極性障害に向いている仕事」という情報も多く見られます。
しかし、双極性障害だからこの職業が向いている、と一律に決めることはできません。
同じ診断名でも症状の程度、得意なこと、生活環境、治療状況は一人ひとり違うからです。
職種名よりも、働き方の条件を考えた方が実際には役立つことがあります。
- 勤務時間がある程度一定している
- 睡眠時間を確保しやすい
- 急な残業が少ない
- 業務量の調整について相談できる
- 通院を継続しやすい
こうした環境は、気分の波を管理しながら働くうえでプラスになることがあります。
「何の仕事ならできるか」だけではなく、「どんな環境なら安定して働き続けられるか」という視点で考えてみることが大切です。
職場に双極性障害を伝えるべき?
診断名を職場に伝えるかどうかで悩む方も多いでしょう。
必ずしも職場の全員に病名を伝える必要があるわけではありません。
一方で、通院のため定期的に休む必要がある、残業を制限したい、業務量を調整してほしい、復職時に勤務時間を短くしたい。
こうした配慮が必要な場合には、上司や人事担当者、産業医などへ相談することがあります。
病名をどこまで伝えるかについても、主治医や産業医と相談しながら考えることができます。
重要なのは、「病気を理解してもらう」ことだけを目的にするのではなく、仕事を続けるために具体的に何を調整してほしいのかを整理することです。
「双極性障害があります」だけでは、職場側もどう対応すればよいのか分からないことがあります。
「残業は当面避けたい」「通院日の勤務を調整したい」「復職直後は短時間勤務から始めたい」など、必要な配慮を具体的に相談する方が話を進めやすくなります。
休職した方がいいのはどんなとき?
仕事を休むべきかどうかは、症状や仕事内容によって異なるため、一律には決められません。
ただ、仕事を続けることで明らかに症状が悪化している場合には、休職を検討することがあります。
うつ状態が強く、朝起きられず遅刻や欠勤が増えている場合。
集中力や判断力が低下し、仕事上のミスが急激に増えている場合。
躁状態が強くなり、自分で行動をコントロールすることが難しくなっている場合。
こうした状態では、「仕事を続けること」そのものを最優先にするより、治療を優先した方がよい場合があります。
休職するかどうかは自己判断だけで決めず、主治医と相談してください。
復職するときは「元通り」を急がない
休職後に状態が改善すると、「早く以前と同じように働かなければ」と焦る方もいます。
しかし、復職直後から以前と同じ勤務時間、同じ仕事量に戻すことが必ずしも適切とは限りません。
短時間勤務から始める。残業を制限する。責任の大きい業務を一時的に減らす。
必要に応じて、段階的に勤務時間や業務量を増やしていく方法があります。
復職の目標は、「初日から以前と同じように働くこと」ではなく、「再び休職せず働き続けられる状態を作ること」と考える方がよいでしょう。

転職を考えるのは悪いことではない。ただしタイミングには注意です!
現在の職場が明らかに病状と合っていない場合、転職が選択肢になることもあります。
ただし、躁状態や強いうつ状態の最中に人生の大きな決断をすることには注意が必要です。
躁状態では、「今の会社を辞めて起業しよう」「もっと大きな仕事ができる」と考え、普段ならしないような大きな決断をすることがあります。
一方、うつ状態では、「自分にはこの仕事は絶対に無理だ」「もう働けない」と必要以上に悲観的に判断することがあります。
退職や転職は生活に大きく影響する決断です。
可能であれば気分が比較的安定している時期に、家族や主治医など第三者とも相談しながら考えることをおすすめします。
仕事を続けるために自分の「前兆」を知っておく
双極性障害では、気分が大きく変化する前に、自分なりのサインが現れることがあります。
軽躁・躁状態に向かうときには、「睡眠時間が短くなる」「話す量が増える」「予定をたくさん入れ始める」「買い物が増える」「仕事のアイデアが次々浮かぶ」といった変化がみられることがあります。
うつ状態に向かうときには、「朝起きるのがつらくなる」「メールを返せなくなる」「仕事に時間がかかる」
「人と話したくなくなる」などが前兆になる方もいます。
こうしたサインは人によって違います。
自分の場合は何が最初に変わるのかを知っておくと、症状が大きくなる前に仕事量を調整したり、主治医へ相談したりしやすくなります。
通院と服薬を「仕事が忙しいから」で中断しない
仕事が安定してくると、「もう大丈夫かもしれない」と感じることがあります。
特に軽躁状態では、本人自身が非常に調子よく感じていることもあります。
そのため、「薬はもう必要ないのでは?」と自己判断で服薬をやめてしまう方もいます。
しかし、双極性障害では再発予防も治療の大切な目的です。
薬の調整や中止については、自分だけで判断せず主治医と相談してください。
また、仕事が忙しくても通院を継続できるよう、勤務時間や通院日の調整について職場へ相談することもあります。
まとめ|双極性障害では「頑張れる仕事」より「続けられる働き方」を考える
双極性障害があるからといって、仕事を諦めなければならないわけではありません。
ただし、双極性障害では、うつ状態だけではなく躁状態・軽躁状態も仕事に影響することがあります。
特に注意したいのは、調子が良いときほど働きすぎてしまうことです。元気だから残業する。睡眠時間を削る。仕事をたくさん引き受ける。新しいことを次々始める。
その瞬間には問題がなくても、その後の気分の波に影響することがあります。
そのため、双極性障害と付き合いながら働くときは、「一番調子が良い日の自分」を基準にしないことが大切です。少し調子が悪い時期でも無理なく続けられる仕事量や生活リズムを基準にする。睡眠を守る。自分の躁・うつの前兆を知っておく。必要なときには職場へ具体的な配慮を相談する。
そして、調子が良くても治療を中断しない。こうした積み重ねが、長く働き続けることにつながります。
「どんな仕事なら自分に向いているのか」を探すことも大切ですが、
それ以上に、「自分はどんな働き方なら安定して続けられるのか」を知ることが重要です。
仕事を続けることだけを目標にするのではなく、治療や睡眠、生活とのバランスを保ちながら働ける状態を作っていく。
それが、双極性障害と仕事を長く両立していくための一つの考え方です。

