「死にたい」と言われたらどう接すればいい?|希死念慮がある人への接し方と言葉について

まず大切にしたい3つのこと
突然「死にたい」と打ち明けられると、何か言わなければ、思いとどまらせなければと焦ってしまうかもしれません。
けれども、まず大切なのは、正しい言葉を探すことよりも、打ち明けてくれた相手のつらさを置き去りにしないことです。
・否定したり、すぐに励ましたりせず、まず話を聞く
・「話してくれてありがとう」「そんなにつらかったんだね」と、気持ちを受け止める
・自殺の具体的な方法や時期を考えているなど、命の危険が切迫している場合は、ひとりで抱えず医療機関や緊急の支援につなぐ
「完璧な返事をしよう」「何とか解決しなければ」と焦る必要はありません。
まずは、打ち明けてくれた相手の言葉を真剣に受け止め、その場でできる対応を一緒に行っていきましょう。
この記事の監修医(心療内科医・精神科医・精神保健指定医)
川口メンタルクリニック院長 今雪宏崇
この記事の執筆・構成
川口メンタルクリニック 記事作成チーム
日々患者さんと接する医療相談員・精神保健福祉士などが記事を作成、院長が監修しています。
最終更新日:2026年8月29日
| 避けたい言葉・対応 | 代わりにかけたい言葉 | 理由 |
|---|---|---|
| 「そんなこと言わないで」 | 「そこまでつらかったんだね」 | 気持ちそのものを否定せず受け止める |
| 「みんなつらいんだから」 | 「あなたは今、とてもつらいんだね」 | 他人と比較せず、本人の苦しさに目を向ける |
| 「頑張って」 | 「ここまでよく耐えてきたね」 | さらに頑張ることを求めず、これまでの頑張りを認める |
| 「考えすぎ」「気にしすぎ」 | 「話してくれてありがとう」 | 苦しさを軽く扱わず、話しても大丈夫だと伝える |
緊急の受診が必要か迷う場合
夜間や休日に精神科の受診が必要な場合は、各都道府県の精神科救急医療の相談窓口に相談すると、状況に応じた受診先などの案内を受けられます。
→埼玉県精神科救急情報センター
「救急車を呼ぶべきか」など、判断に迷う場合は、#7119(救急安心センター)へ連絡してください。
※#7119は一部利用できない地域があります。
「死にたいって言われたけど、何て返せばよかったんだろう」
「励ました方がいいのかな」
「下手なことを言ってしまいそうで怖い」
家族や恋人、友人など、大切な人から「死にたい」と言われると、
頭が真っ白になることがあります。普段なら自然に言葉が出る相手なのに、
その瞬間だけは何も浮かばなくなる。そんな経験をする人もいます。
そして多くの人が、あとから、「あの返しでよかったのかな」
「傷つけてしまったかもしれない」「もっとちゃんと聞けばよかった」と悩み続けます。
この記事では、「死にたい」と打ち明けられたときに、相手の気持ちを置き去りにせず、どのように言葉をかけ、どんな対応をしていけばよいのかを、精神科医監修のもと解説します。
「死にたい」という言葉の背景には、さまざまな苦しさがある
「死にたい」という言葉の背景には、「もう疲れた」「この苦しさから逃れたい」「何も考えずに休みたい」など、さまざまな思いが重なっていることがあります。
精神科や心療内科で話を聞いていると、「本当は助かりたい」という気持ちと、「もう限界だ」という感覚が、本人の中に同時に存在していることもあります。
そのため、「死にたいなんて言わないで」と強く否定されると、“死にたい”という言葉だけでなく、その背景にある苦しさまで否定されたように感じてしまうことがあります。
実際、それがきっかけで「もう誰にも言えない」と感じてしまう人も少なくありません。
「何とかしなきゃ」と焦ったときほど、まず話を聞く
大切な人が苦しんでいる姿を見ると、周囲は焦ります。
励ました方がいいのか。
前向きなことを言った方がいいのか。
気分転換に連れ出した方がいいのか。
何とか元気になってほしくて、言葉を探します。
ただ、希死念慮が強いときには、すぐに問題を解決しようとしたり、前向きな方向へ動かそうとしたりすることが、本人の負担になる場合があります。
このとき周囲に求められるのは、答えを出すことよりも、まず本人の話を聞き、その苦しさを理解しようとすることです。
「何があったの?」
「いつ頃からそんなにつらかった?」
と、無理に結論を急がず、本人が話せる範囲で聞いてみてください。
一人で抱え込ませないよう、そばにいることも大切な対応の一つです。
すぐに元気にできなくても構いません。
「何とかしなきゃ」という気持ちをいったん脇に置いて、一緒にそのつらさを見ることから始めてもいいのです。
「みんなつらいんだから」と比べず、本人のつらさをそのまま受け止める
「みんな頑張っているんだから」「自分だけじゃないよ」
励ますつもりで、こうした言葉をかけたることもあるかもしれません。
けれども、つらさをほかの人と比べられると、本人は「これくらいで苦しいと言ってはいけない」「自分が弱いだけなのかもしれない」と感じ、さらに言葉を飲み込んでしまうことがあります。
相談員実際、希死念慮がある人の多くは、「自分だけがつらい」なんて思っていません。
むしろ、「もっと大変な人もいるのに」「こんなことで苦しい自分はダメだ」と、自分を責め続けていることがあります。
その状態で「みんなつらい」と言われると、「やっぱり自分が弱いだけなんだ」と、さらに追い込まれてしまうことがあります。
大切なのは、その苦しさが他の人と比べて大きいか小さいかではなく、本人が今、耐えがたいほどつらいと感じていることです。
「そんなにつらかったんだね」
「そこまで追い詰められていたんだね」
と、その人自身のつらさに目を向け、必要なら医療機関のケアにつなぐことも視野に入れてみてください。


「頑張って」が負担になることもある
「頑張って」という言葉も、本来は悪い言葉ではありません。
ただ、希死念慮が出るくらい追い込まれている人は、
周囲から見えないところでかなり無理をして、限界まで耐えて、ギリギリの状態で生活していることもあります。
朝起きるだけでもしんどい。
人と話すだけで消耗する。
何もしていないように見えても、本人の中ではずっと戦っている。
そんな状態の人にとって、「頑張って」は、
「まだ頑張らなきゃいけないのか」というプレッシャーになることがあります。
だから、無理に前向きな言葉をかけようとしなくても大丈夫です。
「ここまでよく耐えてきたんだね」
「今は頑張らなくてもいいよ」
など、これまでの頑張りや、今のつらさを認める言葉のほうが受け取りやすいかもしれません。


死にたい」と言われたら、どんな言葉をかければいい?
周囲は、「元気にしなきゃ」「何か気の利いたことを言わなきゃ」と思いやすいものです。
ですが、本人は“前向きで元気になれる言葉”を求めているというより、
「苦しかったことを分かってほしい」状態にいることがあります。
そんなときは、
「そんなにつらかったんだね」
「ずっと一人で抱えてたんだね」
「話してくれてありがとう」
など、まずは相手のつらさをそのまま受け止める言葉をかけてみてください。
うまく言葉が出てこないときは、無理に励ましたり、答えを出したりする必要はありません。
相手の話を遮らずに聞き、「分かろうとしている」という姿勢を示すことも大切です。
もちろん、それだけですべてが解決するわけではありません。
ですが、「話しても大丈夫だった」と感じられることは、その後、周囲や医療・支援につながるきっかけになることがあります。



相談した人があとから心に残っているのは、”正しい言葉”そのものよりも「否定されなかった」「ちゃんと話を聞いてもらえた」「一人にされなかった」という感覚だったりします。
相談員として日々話を聞く中でも、それを強く感じます。
支える側も限界になりやすい
家族や恋人など身近な人は、「自分が支えなきゃ」「ちゃんと見ていないと危ないかもしれない」と、責任を感じやすくなります。
夜中も眠れない。外出していても気になる。LINEの返信が遅いだけで不安になる。
こうして、支える側も少しずつ疲弊していきます。
大切な人を支えたいと思う気持ちと、すべてを背負うことは別の問題です。
自分の睡眠や仕事、日常生活まで崩れ始めているときは、支える側が周囲や医療・支援機関に頼ることも大切です。1度の電話の相談でも、対応の仕方が見えてくることがあります。
お住まいの都道府県の精神保健福祉センターや保健所では、ご本人だけでなくご家族自身の相談にも応じています。ひとりで抱え込む前に、電話で相談してみるのも一つの方法です。
厚生労働省リンク
・精神保健福祉センター(各都道府県・政令指定都市に1カ所、東京都は3カ所)
・保健所所管区域案内:こころの健康相談から精神医療に関わる相談、医療が必要かどうかまで相談でき(匿名でも可)、近隣の医療機関を紹介してもらうことも可能。
身近な人を支えることに疲れたときの距離の取り方や、共倒れを防ぐ方法については、
以下の記事でくわしく解説しています。


まとめ|「死にたい」と言われたら、つらさを置き去りにしない関わりを
「死にたい」と言われると、どう返せばいいのか分からなくなったり、「何とかしなければ」と焦ったりするのは自然なことです。
大切なのは、すぐに励ましたり答えを出したりすることではなく、まず本人の言葉を聞き、そのつらさを受け止めることです。
「そんなにつらかったんだね」
「話してくれてありがとう」
そんな言葉や、そばで話を聞く姿勢が、「話しても大丈夫だった」という安心につながっていきます。
そして、「死にたい」という言葉が出ているときは、家族や恋人だけで抱え込まないことも大切です。
本人の苦しさが続いている、日常生活に影響が出ている、受診した方がよいのか迷っている――そんな段階でも、精神科・心療内科や地域の相談窓口に電話してみて大丈夫です。
つらさを分かち合える場所があることは、本人にとっても、支える方にとっても、大きな支えになります。
- 厚生労働大臣指定法人・一般社団法人 いのち支える自殺対策推進センター(https://jscp.or.jp/soudan)
- 政府広報オンライン 「あなたもゲートキーパーに!大切な人の悩みに気づく、支える」(https://www.gov-online.go.jp/article/201402/entry-7514.html)









