認知症の主な症状や治療方法とは?家族が心がけるべき3つのこと
超高齢化社会が進んでいる日本では、65歳以上の高齢者の約15%が認知症を患っていると言われています。そのため、認知症の人を抱えている家庭も多く、日常生活や社会生活に支障をきたすようになる患者さんを、家族でサポートするのが難しくなってきて頭を抱えているケースも多いでしょう。
この記事では、認知症の症状や治療方法・家族が心がけるべきことを中心に解説します。認知症の家族をどのように支えて行けば良いのかを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
認知症の主な症状とは
認知症になると、どのような症状が現れるのでしょうか?認知症には、主に「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」があり、それぞれ特徴が異なります。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症の症状として現れやすいのは、記憶力の低下です。アルツハイマー型認知症は、脳の中でも記憶に大きく関わる海馬という部分の委縮によって起こる認知症だと言われています。短期記憶(最近や直前の出来事)を覚えるのが難しく、日々物忘れが進行することで病気に気づくケースがほとんどです。
最初は、日にちや約束を忘れたり、行き慣れた場所にもかかわらず道に迷ったりします。そのうち、症状が進行していくと「意欲の低下」「口数が少なくなる」「無気力」「物とられ妄想」などが現れます。
アルツハイマー型認知症は、最終的には自分の名前や親しい人の顔などが分からなくなり、日常生活で必要になる動作(着替え・入浴・歯磨きなど)の方法も忘れてしまいます。人によっては、攻撃的になる、徘徊するなどの症状が強く出る場合もあるでしょう。言語機能・身体機能が共に低下し、寝たきりになるケースも多いです。
脳血管性認知症
脳血管性認知症の主な症状としては、「歩行障害」「身体機能の低下」「抑うつ状態」「自発性の低下」「夜間興奮」などが挙げられます。脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症とは異なり、脳出血などの脳の障害で脳が損傷することによって生じます。中には、突然人が変わったような言動が現れる場合もあるでしょう。
上記の他にも、「発語困難」「話の理解が乏しくなる」「感情のコントロールが難しい」「視力の低下」などが見られるケースもあります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、脳の大脳皮質に異常なたんぱく質の蓄積が起こって発症します。脳の年齢的な変化によって生じるとも考えられており、記憶に関わる側頭葉や視覚情報を処理する後頭葉に問題が生じます。
最初は、ささいな物忘れ程度な場合が多いですが、徐々に「幻視」「パーキンソン症状」「転倒を繰り返す」「失神」「無気力」「過眠」「うつ状態」などの症状が現れます。
認知症の人を抱える家族が心がけること3つ
認知症は、日常生活に支障をきたす症状が現れるため、一緒に生活する家族にとっては対処に悩むことが多いですよね。ここでは、家族の負担が軽減する心がけを紹介します。
1.優しく分かりやすい口調で話しかける
認知症を発症すると、記憶することが難しくなるだけではなく、聴力や視力も低下する場合があります。そのような時に、突然大きな声で家族に話しかけられたり、難しい言葉を使ったりすると患者さんはパニックになり、怒り出してしまうこともあります。
そうなると、支援・介護している家族に危害が及んだり、患者さんとの関係性が悪くなったりする可能性があるので、できるだけ優しく分かりやすい口調で接するようにしましょう。
2.基本は見守り、余裕をもって接する
認知症の人を支援・介護していると、物忘れが増えてスムーズに日常生活が進まなかったり、動作一つひとつがゆっくりで、つい急かしてしまったりすることもあるでしょう。認知症初期はできるだけ患者さんが自身で考え、行動する能力を尊重することが大切なのですが、つい手伝ってしまいたくなりますよね。
しかし、大切なのは危険性がないかを確認した上で見守り、必要な時に手を差し伸べる程度の距離感を保つようにすることです。
3.支援・介護疲れを回避する先を確保しておく
認知症の症状が進行してくると、家族だけで患者さんを支援・介護するのに限界を感じてきます。記憶力や身体的な機能の低下によって、家族に負担が大きくのしかかってくるからです。
また、家族自身の体調が悪くなるなどの問題も発生します。そのような時に、家族だけで抱え込んでしまうと、共倒れ状態になってしまう危険性があるため注意しましょう。いざというときに備えて医療機関などと連携し、普段から支援・介護の休息先を確保することが重要です。
認知症の治療方法
認知症を緩和するためには、以下のようないくつかの治療方法があります。どれかひとつだけではなく、それぞれの治療法を並行し、総合的にサポートすることが大切になります。
薬物療法
現在、認知症を完治させる薬は残念ながらありません。しかし、表面に現れている症状などの進行を遅らせる薬は存在します。
認知症の代表的な症状である物忘れに対しては、「コリンエステラーゼ阻害薬」や「NMDA受容体拮抗薬」などが用いられます。これらは、神経細胞の伝達を良くする働きがあるとされています。また、意識の混乱や興奮に対しては向精神病薬、睡眠障害に対しては睡眠薬など、症状に合わせた薬が処方される場合もあるでしょう。
一方、高血圧・糖尿病・脂質代謝異常症などが原因で起こる脳血管性認知症には、原因となる疾患に対してふさわしい薬が使用されます。
心理療法
認知症になると、心理的な問題が現れるケースが良くあります。そういう場合に効果的なのが心理療法です。物忘れなどがひどくなることで、患者さんが自信をなくし、それに伴って不安感や恐怖感が強く出ないように、心理療法を活用して心理面の安定を図ります。
訪問診療
認知症は完全な回復が見込めず、日に日にできないことが増えていきます。家族だけで支援・介護をするのは、お互いに精神的・身体的に追い込まれる原因になり得るでしょう。そのため、認知症の治療では医療機関と連携し、訪問診療を活用することで家族からの相談に応じ、家族の支援・介護疲れを回避しながら認知症の人のケアをする方法を取り入れる選択肢もあります。
訪問診療とは、高齢などで通院が困難な人に対して、医師が定期的に自宅へ訪問し、診療を行うサービスです。薬の処方や療養上のアドバイスなど、病院で診察を受けるのと同じような感覚で、不安点などをその場で聞くことができます。引きこもりがちになる認知症の人やその家族にとって、専門家が自宅へ訪問し、ふさわしいアドバイスをすることは、精神的にも支えになるはずです。
まとめ
認知症は、記憶を司る部分の機能低下だけではなく、日常生活に必要な動作が徐々にできなくなる疾患です。脳血管性認知症のように突然症状が出るものもあれば、アルツハイマー型認知症のように、少しの物忘れから始まるケースもあります。しかし、どのような場合でも日常生活や社会生活に支障が出るという意味では同じですので、必要な支援に頼れる部分は頼り、お互いが疲労し過ぎないケアをつづけることが重要です。
参考URL
https://www.taiyo-seimei.co.jp/net_lineup/colum/ninchi/018.html
https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/dementia_and_care