診断書を書いてくれない理由|医師が解説する7つのケースと対処法

知っておきたいこと
診断書が書いてもらえない主な理由は、次の3つに分けられます。
・医学的根拠が不十分
(診断や所見が確定できない)
・法律・制度上の制約
(無診察診断の禁止、記載できない内容など)
・患者さんの不利益回避
(将来や仕事への影響・誤解のリスク)
【診断書をお願いするときに医師に伝える5つのポイント】
・目的(休職、給付申請など)
・提出先(会社・保険会社など)
・指定書式の有無
・必要な期間や日付
(例:〇月〇日〜〇月〇日分)
・現在の症状
【まずやること】
「なぜ・どこに・いつまで必要か」を整理し、診察時に医師へ明確に伝えましょう。
医師には、「なぜ今回診断書の発行が難しいのか」をその場で確認しておくと、
次の行動が決めやすくなります。
診断書が必要な場面で、「今回は発行できません」と案内されることは少なくありません。
背景には、医学的根拠が不十分なケース、法律・制度に基づく作成上の制約、診断名による将来の不利益を避ける判断 など、明確な理由があります。
ただし、診断書が書いてもらえない状況の多くは、事前の準備や伝え方を整えることで改善が可能です。
本記事では
・医師が診断書を「発行できない」と判断する主な根拠
・スムーズに発行してもらうために整理すべき情報
・初診・診察日・専門外依頼などで起きやすい注意点
・断られた際に取れる選択肢と相談先
を体系的に整理しました。
診断書を確実に受け取りたいときに役立つ判断基準と適切な依頼方法を、わかりやすく解説していきます。
診断書を書いてもらえない理由|医師が「発行できない」7つのケース

診断書が「書いてもらえない」背景には、医学的・法律的な制約から、患者さんの将来の不利益を避けるための判断まで、複数の理由が重なっています。
ここでは、医療現場で実際に起こりやすい7つのケースを整理します。
診断書をお願いしたのに「今回は出せません」と言われると、驚いたり不安になったりするかもしれません。
しかし、これは医師の個人的な感情ではなく、医学・法律・患者さんの将来への配慮といった、明確な理由に基づく判断なのです。
・医学的根拠の不足(所見がない・診断が確定していないなど)
・不正利用の防止(所見がない・診断が確定していないなど)
・無診察での発行禁止(医師法第20条・診察していない日の診断書は出せない)
・カルテの限界(保存期間切れや、記録内容の不足)
・診断書の種類による作成難易度の違い
・患者さんの不利益を避けるため
・病院・クリニックの方針による違い
この7つのどれに当てはまるかによって、必要な対応や相談先が変わります。
それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
「医学的根拠の壁」:診断書が発行されない3つのパターン
医師が診断書を発行できない最大の理由は、「医学的な証拠として示せるデータが不足している」ためです。
これは患者さんの努力や伝え方とは無関係で、医師が責任を持って記載するうえで避けられない基準といえます。
診断書は「病気や症状が医学的に確認できていること」を証明する公的書類です。
そのため、
・所見(診察で得られる客観的情報)や検査結果が不足している場合
・診断がまだ確定できない段階
・依頼内容が担当科の専門領域を超えている場合
には、発行を見送らざるを得ません。
ここでは、医学的根拠が不足して発行できないケースを3つのパターンに分けて解説します。
客観的な所見や検査結果が不足している
診断書は、医師が「実際に診察で確認したこと」や「検査で得られたデータ」をもとに作成します。
たとえば、

例えば、以下のようなケースでは、医学的証拠が不十分となり、診断書の作成が困難になることがあります。
・血液検査や画像検査で異常が見つかっていない
・診察で症状の程度が客観的に確認できない
・自覚症状のみで、医学的な裏付けがとれていない
「疲れやすい」「集中できない」といった訴えも重要な症状です。
しかし、カルテに記録できる客観的情報がない状態では、休職や給付申請の根拠として認められにくいことがあります。
症状が軽度、または診断が未確定である
初診や受診歴が短い段階では、医師は「一時的な不調なのか、病気として診断すべき状態なのか」を慎重に見極めます。
- 経過観察が必要な段階にある
- 症状が軽く、日常生活への支障が明確でない
- 診断基準を満たすだけの情報がまだ集まっていない
こうした状況では、誤った診断で患者さんを不利にしないために、診断書の発行を見送ることがあります。
医師の専門外で医学的判断ができない
依頼内容が担当科の専門領域を超える場合、医師は医学的根拠をもって記載することができません。
よくあるNG例
・内科に整形外科の診断書(骨折・捻挫・腰痛など)の依頼
・精神科に「内科疾患(高血圧や糖尿病)の経過や数値の証明」を求める
・整形外科に「メンタル不調による就労可否」の判断を依頼
医師は、自分が責任をもって判断できる範囲でしか診断書を作成できません。こうした場合は適切な専門科への紹介となるのが一般的です。
診察していない日の診断書は出せない
診断書は、医師が自分の目で確認し、得られた情報をもとに作成する公的な書類です。
そのため、医師は実際に診察していない過去の日付の状態を「医学的な事実」として証明することはできません。
診察のない日の証明ができない理由は、大きく分けて「法律上のルール」と「医学的な限界」の2つがあります。
こうした理由から、以下のような依頼は原則として受けられません。
・「先週の〇日に体調が悪かったことを証明してほしい」
・本人は来られないけれど、代わりに診断書を書いてほしい」
・「当日は受診できなかったが、その日付で休職の診断書が欲しい」
以下で、医師法に基づく具体的なルールと、その背景にある医学的な理由を詳しく見ていきましょう。
医師法第20条「無診察診断の禁止」に基づく原則
医師法第20条では、医師が「診察をせずに診断書を交付してはならない」と定めています。
これは、診断書が仕事・保険・法的手続きなど重要な場面で利用される「証明書」であるため、責任をもって書けるのは“医師が実際に診察した日に限られる”、という理由によるものです。
もし診察なしで作成した場合、
- 医師が処罰の対象になる
- 医療機関の信用に関わる
といった問題が起こるため、医師側も慎重にならざるを得ません。
本人を直接診察していない場合、医学的根拠をもって記載できない
診断書には、「いつ・どんな症状があったか」という医学的事実を記載します。
しかし、診察していない日の状態は医師が直接確認できないため、医学的根拠として扱えません。
たとえば、
- 「家族の説明によると、この1ヶ月は動けずに外出できなかった」
- 「職場の人によると、〇日にひどいパニック発作があった」
といった内容は、医師が責任を持って”医学的事実”と断言することができません。
そのため、医師に症状を把握してもらうために伝えることは意味がありますが、診断書に記載するのは難しいことも。
診断書に記載できるのは基本的に「診察した日付」や「その日に確認した症状」に限られます。
これは、法律と医療の両面から定められた「患者さんを守る仕組み」といえます。
「カルテの限界」:過去に受診していても発行できないことがある
過去に受診していても、カルテの保存期限や記録内容が不十分な場合は、診断書の根拠が足りず発行できないことがあります。
これは「診察していない日の診断書が出せない」ケースとは異なり、診察していたとしても“証拠が残っていない”ために起こる問題です。
カルテ(診療記録)は医師が診察内容を残す大切な情報源ですが、万能ではありません。
保存期間には法的な決まりがあり、記録が簡潔すぎたり古かったりすると、診断書を作成するための材料が不足してしまうことがあります。
ここでは、カルテが原因で診断書が発行できなくなる「2つの理由」についてくわしく説明します。
「保存期間(5年)」の壁:受診歴があっても記録がない
カルテ(診療録)の保存期間は、医師法により 「原則5年間」 と定められています。
そのため、最終受診から5年以上が経過している場合、
・記録がすでに廃棄されている
・電子カルテ導入前の紙カルテが倉庫に眠っている
・そもそも当時の記録が簡易的で詳細が残っていない
といったケースが珍しくありません。
カルテが残っていない状態では、医師は「いつ」「どんな症状で」「どの程度困っていたのか」を確認する手段がありません。
患者さんの記憶だけを頼りに診断書を書くことはできないため、結果として 「証拠がなく、発行できない」 という判断になることがあります。
「記録の質」の壁:古い傷病や1回のみの通院で詳細不明
カルテ自体が存在していても、記載内容の具体性が欠けている場合、診断書の作成根拠としては認められないことがあります。
特に古い記録や、単発的な受診では、以下のような「最低限の診療記録」しか残っていないケースが多く見られます。
- 症状や所見の記載が数行のみ
- 処方内容だけの記録で、具体的な状態が書かれていない
- 重症度や生活支障度に関する記述がない
診断書の発行には、過去の時点における「具体的な状態」や「因果関係」の証明が求められます。
しかし、記録が簡潔すぎる場合、医師は当時の状況を医学的に証明することができません。
「治療のための記録」と「証明のための書類」の違い (くわしく)
実は、カルテと診断書は、そもそも作られた目的(役割)が違います。
・カルテ: 目の前の病気を「治療する」ための、医師のメモ
・診断書: 過去の状態を他人に「証明する」ための、公的な書類
カルテはあくまで「治療」が目的なので、「初診のみで終了した」「軽症で経過観察のみだった」といったケースでは、将来の証明に必要な細かい情報までは書かれないことが一般的です。
「不正利用」防止:医師が慎重になる2つのリスク
診断書は、会社・保険・法的手続きなど重要な場面で使われるため、不正利用の可能性がある場合には発行を控えることがあります。
特に「ズル休みと誤解されやすい依頼」や「事故・パワハラなどの因果関係を求める依頼」は、医師がもっとも慎重になる場面です。
ここでの判断は、患者さんを疑っているわけではなく、診断書という書類の性質上、医師が責任を負う必要があるためです。
誤った記載は、患者さん自身の将来にも不利益をもたらす可能性があるため、慎重な対応が求められます。
「ズル休み・詐欺」と疑われてしまうケース
診断書の依頼内容が、本来の目的(療養の証明)から乖離している場合、医師は発行に応じられません。特に以下のような依頼は、不正利用(ズル休みや保険金詐欺など)のリスクが高いと判断され、慎重に扱われます。
・「休みたい」「辛い」という申告のみで、医学的所見に乏しい
・症状と休養期間のバランスが不自然
・診断日や内容の改ざん・遡及(そきゅう:日付のさかのぼり)を求める
・「絶対に診断書が欲しい」と、内容よりも発行自体を強要する
医師には、「医学的に正当な根拠がない限り診断書を発行してはならない」という法的義務があります。
疑いを避けるためには、受診時に「具体的な症状」と「日常生活での困りごと」を正確に伝え、医学的な必要性を認めてもらうことが重要です。
「事故・パワハラとの因果関係」を断定する依頼
診断書には「医学的判断」しか記載できません。
社会的な「原因の断定」は医師の権限外となります。
- 「パワハラが原因による」うつ病
- 「事故による」後遺症
このように「原因」と「結果」を結びつける記載(因果関係の証明)を求められることがありますが、医師は現場を見ていないため、客観的な事実としてこれを断定することは不可能です。



医師が記載できるのは、あくまで以下の範囲に限られます。
- 現在の病名と症状
- 医学的に推測される経過
- 「本人の申し立て」としての記載(例:「~により受傷したと話している」)
「原因の断定」は、医師ではなく、最終的に労働基準監督署や裁判所などの司法・行政機関が判断する領域です。
診断書の「種類」によって作成の難易度が変わる
診断書と一口に言っても、内容や用途によって必要な記載事項や作成の手間は大きく異なります。
特に公的な手続きや補助金・年金などに用いる診断書は、詳細な記載や厳密な審査が必要となり、医師も慎重な対応を求められます。
また、医療機関によっては対応していない種類の診断書もありますので、事前に確認することが重要です。
| 学校・職場用 | 診断名・安静指示 | ★ | 即日〜翌日 | 1,000〜8,000円 | 内容が簡潔。短期間発行も多い |
|---|---|---|---|---|---|
| 傷病手当金 | 検査所見・就労不能の証明 | ★★ | 即日〜7日 | 3,000〜5,000円 | 保険適用。継続受診が必要 |
| 労災・自賠責 | 事故記録・業務関連性 | ★★★★ | 1〜4週間 | 3,000〜6,000円 | 因果関係の立証が必須で慎重 |
| 障害年金 | 長期治療・症状の経過 | ★★★★★ | 1〜4週間 | 5,000〜20,000円 | 最も詳細な記載が必要。複数書類になることも |
※期間や費用は一般的な目安です。
医療機関によって異なり、1ヶ月以上かかるケースもあります
福祉手帳・障害年金は記載項目が多く複雑で、慎重な判断が必要
福祉手帳や障害年金の診断書には、病名だけでなく、生活状況・症状の経過・日常生活の困りごとなど、多くの項目を詳しく記載する必要があります。
審査も厳しく、内容に不備があれば申請が認められないこともあります。
記載には時間がかかる場合が多いので、早めの相談が安心です。
自賠責・労災診断書は対応していない医療機関もあるため、事前確認が必要
自賠責(交通事故)や労災関連の診断書は、専門的な記載や証拠書類が必要で、医療機関によっては取り扱っていない場合があります。
依頼前に、「どの種類の診断書を」「どこへ提出するために」使うのか を伝え、その医療機関で作成可能か必ず確認しましょう。
患者の不利益を避けるために出さない場合
診断書の内容によっては、患者さん自身が将来の場面で思わぬ不利益を受けてしまうことがあります。
医師はそのリスクを避けるため、あえて診断書を控えることがあります。
これは「患者さんを不利にしないための配慮」であり、決して拒否や否定ではありません。
診断名が強い心理的負担や自己否定につながる恐れがある
診断書に特定の病名が記載されることで、本人が必要以上にショックを受けたり、「自分は重い病気なのでは」と感じてしまうことがあります。
また、学校・職場などに提出する場合、周囲の誤解や偏見で過度な気遣いを受けたり、居づらくなってしまうケースも少なくありません。
まだ診断名が確定していない段階や、本人に告知していない段階では、医師が「いったん慎重に」と判断し、すぐに診断書を出さないことがあります。
これは、患者さんの心理的負担を減らすための配慮です。
診断書が将来の就労・昇進・転職、または法的手続きで不利になる可能性がある
診断書に記載された病名や状態は、将来の就職活動や転職時の健康診断、生命保険・年金の審査で「不利な扱い」につながることがあります。
離婚調停や損害賠償などの法的手続きでは、診断書が「証拠」として扱われるため、内容が将来の生活に大きな影響を及ぼす可能性も出てきます。
このようなケースでは、医師は「本当に診断書が必要か」「どの表現が適切か」を慎重に判断します。
診断書ルールは病院ごとに違う
ここは、法律ではなく“医療機関ごとのルール”のお話です。
診断書の取り扱いは、医療機関ごとの方針やルールによって大きく異なります。
特に、初診当日の発行や院内での確認が必要なケースでは、医師個人ではなく「組織としてのルール」によって、診断書がすぐに出せないことがあります。
こうした運用は、医学的な誤りや患者さんの不利益を防ぐために、医療機関全体で設けられているものです。
初診当日は発行不可、または院内での確認・承認手続きが必要な場合もある
病院やクリニックでは、組織としてのルールにより、初診当日の診断書発行を制限していることがあります。
- 診断書の作成には、医師だけでなく管理部門や複数の医師による確認・承認が必要となる
- 内容に誤りがないよう、発行までに数日〜1週間の事務手続き期間が設定されている
- 初診当日は、十分な診察情報がそろわないため、原則として診断書を発行しない方針を採用している
こうした方針がある場合、診断書は次回以降の診察や、一定期間の経過観察を経てから発行されることが一般的です。
これは、患者さんの不利益やミスを避けるための、医療機関全体での慎重な運用体制といえます。
診断書をスムーズに発行してもらうために必要な5つのこと


診断書の発行可否は、患者さん側の「準備」で大きく変わります。
医師が判断しやすい情報をそろえることで、余計な往復や書き直しを防ぎ、発行までの時間が短縮されます。
状況に応じてできることから意識してみてください。
提出先・目的・期間を整理して伝える
診断書を依頼する際は、まず「どこに」「何のために」「どの期間分」を提出するのかを伝えるとスムーズです。
医師は提出先ごとに書くべき内容が変わるため、必要な情報を事前に整理して伝えましょう。
■ 準備しておくポイント(5項目のうちの3つ)
・提出先:会社・学校・保険会社 など
・目的:休職・傷病手当金・保険請求 など
・必要な期間:◯月◯日〜◯月◯日まで
■ 伝え方の例
「会社の休職手続きで、◯月◯日〜◯月◯日までの診断書が必要です。指定の書式はありません」
■ 注意点(重要)
診断書で最も漏れやすいのは “期間” です。
受診前に、どの期間の証明が必要か必ず確認しておきましょう。
ただし、初診の段階では無理に期間を指定せず、医師の判断を優先するのが基本です。
▼期間はどうやって決まるの?(詳しく知りたい人向け)
初診の段階では、症状の安定度や生活への支障の程度がまだ分からないため、医師が慎重に判断します。
診断書の期間を決めるとき、医師は次の点を総合的に見ています。
・当日の症状
(不眠・集中力低下・不安など)
・これまでの経過(急性・慢性)
・仕事や生活への支障の程度
・今後の治療計画
(薬物療法・経過観察の予定など)
初診で無理に詳細な内容指定をしたり、「長期休職可能な診断書が欲しい」と伝えると、適切な診断書が作れなくなる場合があります。
まずはその日の状態を正直に話し、期間は医師に委ねるのが安心です。


症状や日常生活の困りごとをメモして共有する
診察では、緊張や混乱で言いたいことを忘れやすいため、症状や日常生活で困っていることを簡単にメモしておくと、診断書の内容の参考になることがあります。
■ メモする内容(最低限でOK)📒
・発症のきっかけや時期
いつ頃から、何があったか
・症状
不眠、気分の落ち込み、腹痛…など
・生活上の困りごと
朝起きられない、仕事でミスが増えた、歩けない など
箇条書きで十分です。
医師は、患者さんの言葉の「正確さ」よりも「情報の有無」を重視します。
指定様式の有無や必要書類を確認し、受付に渡す
提出先によっては、独自の書式(指定様式)が決まっている場合があります。
書式が違うと受理されないこともあるため、事前に必ず確認しましょう。
最低限やること
・提出先のホームページや担当窓口に、指定の様式があるか確認する
・あれば、事前に印刷または持参して受付へ渡す
■ 注意点
書式を間違うと、書き直し → 再来院 → 二重の費用 につながることがあります。
信頼関係を築くための3つの工夫
診断書の発行をスムーズ、かつ適切な内容にしてもらうには、医師との信頼関係の構築が欠かせません。
そのための誠実な姿勢とコミュニケーションのコツをご紹介します。
症状を「誠実に、一貫して」伝える
診察のたびに症状や困りごとの内容がぶれてしまうと、医師は診断に迷いが生じ、診断書の作成も困難になります。
調子が良い日も悪い日も、その状態を正直に、なるべく一貫した表現で伝えることで、診断書の内容もより適切になりやすくなります。
すべてを隠さず「そのまま」を伝える姿勢が信頼感につながります。
過度な要求や細かな指定は避ける
「とにかく休職の診断書を出してほしい」「この病名で書いてほしい」といった結論ありきの強い要求や、医学的な裏付けのない細かな指定は避けましょう。
診断書は医師の医学的判断に基づいて作成される公的な書類です。
無理な依頼は医師の判断を妨げ、関係悪化や発行の遅れにつながることもあります。
お願いしたい気持ちは大切にしつつ、無理強いは厳禁です。
医師の専門的な判断を尊重する姿勢を示す
最終的に診断書の内容や発行可否を決定するのは医師です。



こちらの状況は全てお伝えしました。
あとは、先生の専門的なご判断にお任せします
と伝える姿勢は、医師への信頼を示し、関係を深めやすくします。
分からない点は遠慮せず質問し、納得できない場合も感情的にならず丁寧に相談するよう心がけましょう。
依頼のタイミングと伝え方のコツ
診断書を依頼する際は、「お願い」の姿勢を忘れず、準備と配慮をセットで伝えることが重要です。
以下の表で、医師との会話のコツを押さえましょう。


| 準備 | 〇 メモや指定様式を見せる | ✖ 嘘や症状の誇張をする |
|---|---|---|
| 伝え方 | 〇 提出先・目的・期間を具体的に伝える | ✖ 命令口調や内容の指定をする |
| 態度 | 〇 医師の判断を尊重する姿勢を示す | ✖ 感情的になり、泣き落としをする |
| 関係 | 〇 感謝を示す、冷静に伝える | ✖ 他院との比較で医師を責める |
診断書の依頼のタイミングは以下。
| タイミング・評価 | 理由 |
| 受付時 〇 | 医師・スタッフが事前に書類作成などの準備ができる |
|---|---|
| 診察の冒頭 〇 | 診断書作成に必要な情報(症状)を意識して診察してもらえる |
| 診察終了 ▲ | 診察時間が終了し、他の患者さんの待ち時間にも影響する |
| 会計後 ✖ | 医師が次の診察に入っている可能性あり |
※診断書をもらい忘れてしまった場合は、できるだけ早く医療機関にその旨を伝えてみましょう。
ここまでの内容を踏まえても、それでも診断書を断られてしまうことがあります。
次の章では、そのときに取りうる具体的な解決策を紹介します。
診断書を断られたときの3つの解決策


診断書が「出せない」と言われても、理由の確認・代替手段の検討・専門家への相談という3つのステップで解決できるケースは多くあります。
不安や焦りが強くなりやすい場面ですが、冷静に状況を整理することが最短ルート。
この章では、まず医師へ理由を確認する方法から始め、必要に応じてセカンドオピニオン・転院・行政窓口・専門家(社労士・弁護士)へ相談する流れを紹介します。
発行できない理由を確認して相談する
診断書を断られた場合、まずは医師に「なぜ発行ができないのか」を率直に尋ねてみましょう。
医師側には医学的根拠や制度上の事情があり、理由を確認することで自分が次にどう行動すべきかが明確になります。
また、医師と相談するなかで、他に必要な書類や代替手続きについてのアドバイスがもらえることもあります。
冷静に理由を把握し、解決の糸口を探ることが第一歩です。
セカンドオピニオンや転院を検討する
主治医との話し合いでどうしても納得がいかない場合や、診断書が生活上不可欠な状況であれば、別の医師に意見を求める選択肢があります。
セカンドオピニオンや転院は、決して特別なことではなく、患者の権利として認められています。
ただし、別の医療機関を訪れる際には、「なぜ前の病院で発行を断られたのか」を事前に把握し、それを新しい医師に正確に伝えるとスムーズです。
行政の窓口や専門家(社労士・弁護士)へ相談する
医療機関だけで解決が難しい、あるいは手続きが煩雑すぎる場合には、行政の相談窓口や社会保険労務士(社労士)・弁護士といった専門家へ相談する方法があります。
障害年金や労災など、目的に応じた制度のサポートや、必要な手続きの代行・アドバイスが受けられます。
体調が悪い中で煩雑なやりとりを自力で進める必要はありません。
専門家の力を借りて、安心して次のステップに進むために積極的に活用しましょう。
診断書に関する「よくある質問」【不安を解消】


診断書でよく寄せられる疑問を、料金・保険適用・過去分の扱い・書く内容の限界など、5つに整理しました。
事前に知っておくと、提出先とのやり取りがスムーズになります。
診断書の「もらい方」「料金や保険」「いつまで使えるか」「どこまで書けるか」を事前に知っておくと、提出先との行き違いやトラブルを大きく減らせます。
不安なまま抱え込まず、わからない点は早めに医療機関や窓口で確認しておきましょう。
まとめ|診断書をもらうには「理解」「準備」「信頼関係」が大切


診断書がすぐに発行されないことは珍しくありません。
しかし、理由を理解し、必要な準備を整えることで解決できる場面は多くあります。
この記事で紹介した「発行できない理由」「依頼のポイント」「困ったときの選択肢」「よくある質問」を参考に、落ち着いて対応していきましょう。
正しい知識と準備、そして医師との信頼関係が、診断書取得へのいちばんの近道です。
診断書の要点まとめ(発行をスムーズにする5つのポイント)
・診断書がもらえない背景には、医学的根拠・法律・制度のルールがある
・依頼時は「提出先・目的・必要期間」を明確に伝える
・症状は誠実に、医師の判断を尊重しながら相談する
・困ったときは理由を確認し、必要ならセカンドオピニオンや専門家へ相談する
・提出先ごとに必要書類が異なるため、事前確認が必須
わからないまま悩むより、「なぜ出せないのか」「どうすれば発行できるか」 を医師に直接尋ねることが、もっとも確実です。
不安が強いときこそ、ひとつずつ確認しながら進めていきましょう。
【この記事の監修医】
今雪 宏崇
(精神科医・川口メンタルクリニック院長)
精神科専門医。地域のメンタルヘルス支援に携わる。
外来診療に加え、訪問診療にも注力し、通院が難しい方へのサポートも行っている。
▶ 詳しいプロフィールは 院長紹介ページ をご覧ください。




