カフェインはこころの味方?それとも落とし穴?——精神科から見たカフェインの良い点と気をつけたいこと

あなたは、今日何杯目のコーヒーですか?
仕事の合間に一杯、朝の目覚めに一杯、なんとなく休憩中にもう一杯…。
私たちの生活の中で、コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれる「カフェイン」はすっかり身近な存在になっています。
「頭がスッキリする」「眠気がとれる」「集中力が上がる」など、カフェインには頼もしいイメージがある一方で、「寝つきが悪くなった」「イライラする」「動悸がする」といった不調を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、精神科の視点から、カフェインが体と心にどんな影響を与えるのかを、良い面と注意点の両面からお伝えします。
カフェインの“良い効果”とは?
まずはカフェインのポジティブな作用から見ていきましょう。適量であれば、以下のような効果が期待できます。
① 覚醒作用(眠気をとばしてくれる)
カフェインは脳内で「アデノシン」という“眠気を誘う物質”の働きをブロックすることで、
一時的に眠気を抑えたり、頭をシャキッとさせたりする働きがあります。朝や昼の集中したい時間帯には大きな助けになります。
② 集中力・作業効率の向上
適度なカフェイン摂取によって、注意力・判断力・短期記憶のパフォーマンスが向上することが研究で示されています。「一杯のコーヒーでスイッチが入る」という感覚、実際に脳の働きに影響しているのです。
③ 気分の安定・軽い抗うつ効果
カフェインは、ドーパミンやノルアドレナリンといった“やる気・快の物質”を活性化させる作用があり、一時的に気分が上がったり、前向きな気持ちになったりすることがあります。
抑うつ気分が軽い人にとっては、うまく使えば日常の助けになる場合もあります。
注意すべき“負の影響”は?
一方で、カフェインの影響は「摂りすぎ」「時間帯」「体質」によっては、心身にマイナスの影響を与えることもあります。
① 不眠・睡眠の質の低下
カフェインの覚醒作用は、摂取後4〜6時間は持続するとされ、個人差はあるものの就寝6時間前以降の摂取は要注意です。
「眠れるけど眠りが浅い」「夜中に何度も目が覚める」という人は、夕方以降のカフェインが影響していることがあります。
② 不安・焦燥・パニックを悪化させる可能性
カフェインは交感神経を刺激するため、もともと不安障害やパニック障害を持っている方には悪影響になることもあります。動悸・手の震え・胸苦しさなどの症状が強まることがあるため、精神科的な不安症状がある方は摂取量に気を配ることが大切です。
③ カフェイン依存・離脱症状
毎日大量に摂っていると、カフェインに耐性ができ、「摂らないと頭痛がする」「だるくてやる気が出ない」などの離脱症状が出ることもあります。
知らず知らずのうちに依存的になっているケースもあるため、「飲まないとやっていられない」が当たり前になっていたら注意が必要です。
精神科的におすすめのカフェインとの付き合い方
▼1日の目安は200〜400mg(コーヒー2〜3杯程度)を上限に
▼午後3時以降はなるべく控える(特に睡眠の質に影響が出ている方)
▼不安が強い日や、パニック発作の傾向がある方は少量に抑える
▼週に1〜2日は“ノンカフェインの日”をつくる(依存予防にもなります)
また、眠気覚ましや集中力アップのためにカフェインを使うこと自体は問題ありませんが、「疲れているサイン」「眠るべき状態」を無視して押し切る手段になっている場合は、少し立ち止まって休息の必要性を見直すことも大切です。
まとめ―カフェインは“使い方次第の味方”―
カフェインは、うまく付き合えば「集中力の味方」「気分転換のスイッチ」として、こころの健康にも役立ちます。
ただし、体質や心の状態によっては、かえって調子を崩す引き金になることもあります。
もし「最近、眠れない」「イライラが強い」「不安が増している」と感じるときは、
日々のカフェインの量やタイミングを一度見直してみるのも良いかもしれません。
こころと体、どちらも大事にする生活の中で、カフェインも“選ぶ力”のひとつです。
あなたにとってちょうどいい付き合い方、見つけていきましょう。

参照
厚生労働省
「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html
農林水産省
カフェインの過剰摂取について
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
働く女性の心とからだの応援サイト
カフェイン・アルコールの影響について