こころの病気と漢方薬の関係性とは?メリットとデメリット、注意点も解説
ストレスの多い現代において、精神的な疾患を抱える人は年々多くなっています。その中で、注目されているのが「漢方薬」です。東洋医学の考え方を中心にメンタルの不調にアプローチする漢方薬は、西洋医学とは異なる効果が期待できると言われているのです。
この記事では、こころの病気と漢方薬の関係性について詳しく解説します。
精神科領域の病気に対して効果が期待できる漢方薬
漢方薬には数多くの種類があり、それぞれ特定の症状に効果を発揮します。以下に、精神科領域の病気に対して期待できる漢方薬を紹介しましょう。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
半夏厚朴湯は、心身が疲れやすく繊細で不安感が強い症状に効果を発揮する漢方薬です。「緊張感」や「不安感」、「イライラ」や「抑うつ」、「不眠」や「神経性の胃炎」、「動悸」や「めまい」などの症状に主に使用されます。 特に、ストレスによって喉に何かが詰まったように感じる症状や、喉が圧迫されるような感覚がある時に用いられる場合が多く、パニック障害の人などに処方するケースがあります。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
酸棗仁湯は、古くから不眠傾向にある人に睡眠薬として使われていた漢方薬で、興奮した精神状態を落ち着かせる効果があります。さまざまなことを考えすぎて脳が興奮し、なかなか眠れずに悩んでいる人にふさわしいと言われています。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
加味逍遙散は、自律神経の乱れを伴う「不安感」や「不眠」、「イライラ」などに効果を発揮します。また、このような精神的な症状に加え、「肩こり」や「頭痛」、「上半身の熱感」や「下半身の冷え」などの身体的な症状に対しても効果が期待出来ます。
さらに、女性特有の不調にも有効で、生理前の不快な症状や更年期によるメンタルの不調に対しても、用いられることが多いです。
抑肝散(よくかんさん)
抑肝散は、神経の高ぶりを鎮める効果がある漢方薬です。主に「イライラ」や「不眠」、「不安感」などの症状に対して用いられます。抑肝散は、体への負担が少ない漢方薬なので、赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢の人に対して使用することができます。
加味帰脾湯(かみきひとう)
加味帰脾湯は、「精神的なストレス」や「不安感」、「不眠」や「焦り」、「イライラ」などの症状を緩和する漢方薬で、神経性の胃腸の不調に対しても使用されることがあります。貧血気味で血色が悪い場合にも効果的だと言われています。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯は、神経の高ぶりを静めて心身の状態を安定させる効果のある漢方薬です。精神的なストレスによる「動悸」や、性的機能の低下に対しても用いられます。また、肋骨下部が張っていて、胸が苦しいなどの症状にも向いています。
漢方薬を用いるメリットとデメリット
漢方薬は、心と身体に効果的な影響を与えます。ただし、漢方薬の持つ以下のようなメリットとデメリットを知っておくことが大切です。
漢方薬のメリット
漢方薬を用いる際のメリットは、
- 精神科の薬よりも、眠気が起きにくい
- 精神科の薬では効果が強すぎる時に、個人の体質に合わせて調節しやすい
- 精神科の薬に比べると、副作用のリスクが少ない
- 無駄に薬が増えすぎるのを、防ぐことが出来る
- 依存性がないので、長期間の治療でも減量や中止がしやすい
などが挙げられます。
精神科で使用する薬は西洋薬が中心なので、人によっては依存が生じたり効果が強すぎて続けることが難しかったりするケースがあります。しかし、漢方薬の場合は副作用のリスクが少なく依存性もないため、長期的な治療で用いても、薬の調節がしやすいのです。
漢方薬のデメリット
一方、漢方薬を用いる際のデメリットには、以下のものが考えられます。
- 精神科の薬に比べて、即効性がない
- 味など、飲みづらいものも多い
漢方薬は、1ヶ月程度は服用を続けないと、効果を実感出来ないケースが多くあります。そのため、メンタルの不調がひどく、日常生活に支障があるレベルの場合は、即効性がないためデメリットとなってしまうのです。
また、漢方薬は生薬なので独特なにおいや味のものが存在し、粉の大きさも異なるので飲みづらいと感じる人もいるでしょう。
精神科領域の治療で漢方薬を使用する際の注意点
精神科領域の治療において、漢方薬は有効です。しかし、使用する際の注意点もありますので、覚えておきましょう。
効果の現れ方に個人差がある
これは、西洋薬にも言えることですが、同じ薬を服用しても効果の現れ方は人によって異なり、副作用の度合いもそれぞれです。また、どのくらいの期間不快な症状が出ていたか、体力的な面によっても実感出来る効果が異なります。
さらに、漢方薬の場合は、体質を根本的に変化させていきながら、不快な症状を治していく特徴を持ちます。そのため、実際に薬の効果が現れるまでに、西洋薬以上の期間がかかり、根気よく続けていく必要があります。
即効性がある西洋薬に比べると、漢方薬は効果が見えづらいと言えます。そのため、治療を続けるモチベーションを保ちにくいという側面があるので、注意が必要です。
効果が見られない場合は精神科の薬と併用する
漢方薬は体質の改善ができ、メリットも多い薬です。ただし、メンタルの不調に関しては緊急性が高い症状があったり、疾患の影響で思うように社会生活を営むことが出来なかったりするケースもあります。そういう場合は、ある程度即効性を重視して、精神科の薬と併用しながら治療を行うことも大切です。
精神科領域の疾患は、そのまま放置しておくと悪化するケースも多いです。そうなると、当事者の負担が大きくなってしまいます。漢方薬で大きな効果が得られない場合は、精神科の薬も併用した方が安心して治療に取り組むことが出来るでしょう。
精神科領域の治療で漢方薬を用いるケースとは
基本的に、精神科領域の病気を治療する際には、主に薬物療法が行われます。この時に使われる薬は、多くの場合西洋薬になりますが、人によっては西洋薬(精神科の薬)を飲むことに対して抵抗が強いケースもあります。
このような場合は、当事者の体調やメンタルの状態を観察しながら、漢方薬を処方し様子を見ることも。つまり、すべての人に漢方薬での治療が行われるわけではなく、それぞれの体質に合った薬で治療を進めていくのです。
まとめ
一般的に、精神科領域の病気の治療と聞くと、効果の強い西洋薬での治療が頭に浮かぶでしょう。しかし、西洋薬への抵抗が強い人や体質的に西洋薬以外が良いと判断された場合は、漢方薬で治療が行われることも少なくありません。漢方薬は、個人の体質に合わせて、さまざまな生薬を組み合わせられるので、西洋薬の必要性も考慮しながら処方されています。
参考URL
https://unryudo.com/health-info/blog06/
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1514.html
https://www.kawata-cl.jp/mentalcare/html/information.cgi?id=1388903163
https://hidamarikokoro.jp/blog/精神科・心療内科でもらえる漢方薬にはどんなも/
https://kokoro-karada-cl.com/column/漢方治療で効果が見込める精神疾病/