パニック障害とはどんな病気?どんな人がかかりやすいの?

パニック障害とは、息のしにくさや吐き気などのような症状が、突然、何の理由もなく起きる障害をいいます。なんらかの体の病気(喘息や風邪など)が原因となって生じるものではなく、自分でコントロールすることもできません。

このパニック障害の罹患者は、おおよそ1000人に6~9人程度だといわれています。また、女性の方がこのパニック障害を患いやすく、罹患者の男女比は1:2.5~3.0程度です。

パニック障害の原因は、はっきりとはわかっていません。ただ、神経伝達物質や、脳の機能異常が原因となっているのではないかと考えられています。

出典:厚生労働省「パニック障害」

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パニック障害の症状3つ

上でも少し触れましたが、ここからは「パニック障害の症状」についてより深く踏み込んでいきましょう。

パニック障害の代表的な症状として、

  • パニック発作
  • 予期不安
  • 広場恐怖

の3つがあります。

パニック発作

「動悸が異常に激しくなる」「手足の震え」「息のしにくさ」「吐き気や腹痛」「異常な汗のかき方をする」「めまいやふらつき」「浮揚感」などが、パニック発作の代表例です。

また、「自分自身のことなのに、自分でコントロールができない」「このまま死んでしまうのではないかという恐怖心にとらわれる」なども、パニック発作の代表的な症状です。

パニック発作の持続時間は、それほど長いものではありません。5分程度~長くても20分程度で収まります。ただしこのときに患者さんが受ける不安は非常に大きいもので、このパニック発作が引き金となり、予期不安や広場恐怖が起きるようになる確率が高いといえます。

予期不安

以前に起こったパニック発作が原因となり、「今度また同じような発作に見舞われるのではないか」という過度の不安を抱える状態になることを、「予期不安」といいます。

すでに述べた通り、パニック障害は身体的な病気を原因とするものではありません。そのため内科を受診しても原因が分からず、「この病気を治す方法もないのではないか」とますます不安に駆られる状態に陥りやすくなります。

「買い物をしているときにパニック症状が起きるかもしれない」という不安に駆られて、近場の買い物ですら一人で行くことが難しくなることも珍しくありません。

また、「職場でまたパニック発作が起きるかもしれない」という予期不安を抱えることにより、仕事に行けなくなる人すらいます。

広場恐怖

「広場恐怖」と呼ばれる症状も、パニック障害の代表的な症状のうちのひとつです。

これもまた、「パニック発作」に端を発します。

「ここでパニック発作を起こしたら、だれも助けてくれない」「ここでパニック発作を起こしたら、恥ずかしい」などのような気持ちから、一人での外出が難しくなったり、特定の場所に足を運べなくなったりすることを「広場恐怖」といいます。

なお「広場恐怖」という名前が付けられていますが、これは「広い場所」に限った意味ではありません。電車や美容院、学校などの「広い場所」には該当しないところに行くことができなくなった場合も「広場恐怖」と呼ばれます。

この症状を患うと、「どこかに出かけるために、公共交通機関に乗る」「学校や職場に行く」「買い物や美容院に行く」などのようなこともとても難しくなります。

また、広場恐怖が非常に厄介なところは、「この症状を原因として、結果的に人間関係が分断されていく可能性も高いこと」にあります。「人に遊びに誘われたけれど、一人でバスに乗るのは怖いから断ろう」「前に一緒に出掛けたときに迷惑を掛けたから、人を誘わないようにしよう」などのような意識が出てくることが原因で、人と交流を持つことが困難になってしまうのです。

なお、パニック障害は気分の障害とも密接な関係があります。パニック発作による「不安」は、ストレスの原因となります。そしてそのストレスが一因となり、抑うつ気分を招いてしまうこともあるわけです。そのため、パニック障害を患っている人のなかには、うつ病などの気分の障害を併発している人もよく見られます。

パニック症状そのものが原因となって死ぬことはない~治療方法もある

ここまでの話を見ていると、パニック障害は非常に恐ろしい病気であるように思えるかもしれません。

しかし実は、パニック発作自体が死の引き金となることはありません。動悸が激しくなっても、吐き気が強くなっても、めまいがしても、それがそのまま実際の死に繋がることはありません。加えて、すでに述べた通りパニック発作は、長くても20分程度で収まります。

また、パニック障害にはきちんとした治療方法もあります。

パニック障害の治療の柱となるのは、「薬物療法」と「精神療法」です。

薬物療法

「幸福ホルモン」と呼ばれるセロトニンの再取り込みを防ぎ、セロトニンの働きを強くするための薬がよく使われます。なおこれは、うつ病の薬としても使われるものです。

また、「抗不安薬」に分類される、不安を抑えるための薬が処方されることもあります。ちなみにこの薬は、不安に対して効果を示すだけでなく、睡眠効果や鎮静効果もあるため、心身の緊張を軽減する働きも期待できます。

パニック障害は、幸いなことに「薬による治療」が非常に有効な障害です。

※薬を飲む場合は、必ず医師の指示に従って飲むようにしてください。

精神療法

パニック障害の改善には薬物療法が有用ですが、それと並行して行っていくべきなのが「精神療法」です。精神療法は、「精神療法的アプローチ」などの名前で呼ばれます。

この精神療法のなかの代表的なものとして、「暴露療法」が挙げられます。これは、患者さんが不安を覚えている場所・事柄にわざと挑戦することで、その不安を克服しようとする療法です。

なおこのパニック障害における暴露療法は、「薬が効いて発作が起きにくくなったら、まずは徒歩2分のコンビニに行ってみよう」「コンビニに行けるようになったら、少し離れたところにあるスーパーに行ってみよう」「スーパーも大丈夫になったら、付き添いがある状態で1区間だけバスに乗ってみよう」などのように、段階的に活動可能な範囲を広めていく療法を指します。

ただしいきなりステップアップすること(「コンビニが大丈夫だったから、一人旅をしよう」など)と逆効果になるため、あくまで「段階的に」進めていくことになります。

パニック障害は、たしかに辛いものです。しかしきちんとした治療を行えば、克服できる可能性がある症状だともいえます。自力だけで治そうとするのではなく、専門家の力を借りて克服を目指すようにしましょう。

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