A型・B型作業所とは?精神科に通う方の「働きたい」に寄り添う就労支援

はたらきたいけど、不安があるあなたへ

「病気の波がある中で、毎日働ける自信がない」
「過去に働けなくなった経験があって、もう一度社会に出るのが怖い」
「いきなり一般企業に就職するのはハードルが高すぎる」

精神科に通院されている方の中には、こうした不安を抱えている方が少なくありません。
ですが、誰もが最初から100%の力を出して働けるわけではありませんし、“段階を踏んで社会に関わっていく”という方法もあるのです。

今回の記事では、就労支援のなかでも特に多くの方が利用している「A型・B型作業所(就労継続支援A型・B型)」について、わかりやすく、そしてできるだけ丁寧に解説していきます。

目次

A型・B型作業所とは?

A型・B型作業所とは、障害や精神的な不調を抱える方が、「自分のペースではたらく経験を積むことができる」福祉サービスの場です。正式には「就労継続支援A型・B型」と呼ばれ、国の制度として整備されています。

就労継続支援とは?

就労継続支援とは、「すぐに一般就労が難しい方」に対して、

・作業訓練
・生活支援
・就労に向けたステップアップ 

の3つを提供する制度です。

この支援には2つのタイプがあります。

A型・B型ってどう違うの?

A型作業所(雇用契約あり)

▼事業所と利用者が雇用契約を結ぶ

▼最低賃金が保証される(給与制)

比較的安定した体調・生活リズムがあり、一般就労を目指す人向け

▼作業内容は軽作業や農作業、製品加工、パソコン入力など

A型は“就労のステップアップ”を意識しており、「将来的には企業就職を目指したい」「雇用契約のある形で安心して働きたい」という方に向いています。

B型作業所(雇用契約なし)

▼雇用契約を結ばない

▼“工賃”というかたちで報酬を得る(時給ではなく出来高制が多い)

日々の体調に波がある方や、まず生活リズムを整えたい方に向いている

▼手芸・内職・清掃・農作業・パン作り・創作活動など内容は多様

B型は「無理なく、その人のペースで働けること」を重視した環境です。社会参加の第一歩として、B型から始めてA型や企業就労に移行するケースもあります。

利用するには?

利用には「障害福祉サービス受給者証」という書類が必要です。これは市区町村の障害福祉課(福祉課)で発行されます。

利用するまでの一般的な流れ

  • 主治医に相談(意見書が必要)
  • 地域の相談支援専門員と面談
  • 作業所の見学・体験利用
  • 「サービス等利用計画」を作成
  • 市区町村に申請し、受給者証の交付を受ける
  • 正式契約・利用開始

💡B型作業所は医師の意見書のみでも利用できる場合もあります。

実際の作業内容ってどんなもの?

A型の例

・お菓子やパンの製造補助
・データ入力や軽い事務作業
・店舗での接客・清掃
・工場での製品組立・検品

一般企業と似たような現場を想定しつつ、福祉的な配慮がある環境で働けます。

B型の例

・内職作業(封入・シール貼りなど)
・アクセサリーや雑貨の制作販売
・農作業・園芸
・創作活動(絵画、陶芸、アートなど)

「生産性」よりも「参加すること」「継続すること」を大切にしています。

よくある疑問Q&A

Q. 就労支援は障害者だけのもの?

→ 必ずしもそうではありません。精神疾患で診断があり、医師の意見書があれば、障害者手帳がなくても利用できるケースもあります。

Q. 長く通わなきゃいけない?

→ いいえ。1〜2ヶ月で一般就労に移行する方もいれば、数年通って徐々に力をつける方もいます。自分のペースで大丈夫です。

Q. 働いてないって思われない?

→ A型・B型は立派な「働く場所」です。実際に工賃や給与も発生し、納税義務も生じるケースがあります。胸を張って大丈夫です。

精神科クリニックとしての視点

私たち精神科医療に携わる者から見ると、A型・B型作業所は「治療」と「社会復帰」をつなぐとても大切な役割を果たしています。

▼働くことで生活リズムが整う
▼自分にできることを知ることで、自己肯定感が育つ
▼周囲と関わる中で、社会的スキルが磨かれる

こうした経験は、薬やカウンセリングだけでは得られない大きな“力”になります。

まとめ|A型・B型は「働きたい気持ち」に応える場所

いま「働くことがこわい」「無理かもしれない」と思っている方こそ、ぜひ知ってほしいことがあります。

それは、「あなたの状態に合った“働き方の選択肢”は、必ずある」ということです。

A型やB型作業所は、ただの“軽作業をする場所”ではありません。
あなたの体調・こころ・未来に向けて、「無理のないはたらき方」を一緒に見つけていく場所です。

もし関心があれば、まずは主治医や地域の支援機関に相談してみてください。
一歩を踏み出したその先に、新しいあなたの居場所がきっと待っています。

参照
厚生労働省 障害者サービスについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html

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