傷病手当金がもらえないケースとは?申請しても不支給になる理由を精神科の視点でわかりやすく解説

目次

はじめに|「もらえると思っていたのに…」は珍しくありません

「うつ病で仕事を休んでいるのに、傷病手当金がもらえなかった」

「申請したけれど、不支給と書かれた通知が届いた」

こうした相談は、精神科外来でも非常に多く寄せられます。

インターネット上でも

「傷病手当金 もらえない」、「傷病手当金 対象外」

と検索する方が後を絶ちません。

傷病手当金は 条件を満たせば受け取れる制度ですが、

逆に言うと、条件を一つでも満たしていないと支給されません。

この記事では、傷病手当金がもらえない代表的なケースを、

精神科の臨床現場の視点も交えながら詳しく解説します。

傷病手当金の基本条件(おさらい)

まず、傷病手当金の支給には、次の4つすべてを満たす必要があります。

  1. 健康保険に加入していること
  2. 業務外の病気やケガであること
  3. 働けない状態であると医師が判断していること
  4. 休業中に給与が支払われていない、または減額されていること

このうち どれか一つでも欠けると「もらえない」 ことになります。

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傷病手当金がもらえない主なケース

そもそも健康保険の対象ではない

(国民健康保険・扶養に入っている場合)

以下の場合、原則として傷病手当金は支給されません。

  • 自営業・フリーランス
  • 国民健康保険に加入している
  • 家族の扶養に入っている

👉 傷病手当金は

「会社員・公務員が加入する健康保険制度」 の給付です。

退職後に初めて働けなくなった

(退職前に休んでいない)

これは非常に多い不支給理由です。

❌ もらえない例
  • 退職するまでは何とか働いていた
  • 退職後に症状が悪化した
  • 退職後に初めて「働けない」と診断された

👉 この場合、
退職時点で「労務不能」でなかったと判断され、
傷病手当金は支給されません。

有給休暇を使っている期間 がある

有給休暇中は、
「給与が支払われている状態」 と見なされます。

そのため、

有給休暇を使って休んでいる期間は

原則として傷病手当金の対象外です

👉 有給を使って休んだ場合は、傷病手当金は支給されません。

給与が満額、またはほぼ満額支払われている

傷病手当金は
「給与の代わりに支給される制度」 です。

そのため、

  • 休職中でも給与が満額支給されている
  • 会社独自の制度で給料が出ている

場合は、傷病手当金は支給されません。

※ただし、
給与が一部のみ支払われている場合は、
差額分が支給されることもあります。

医師が「働けない」と判断していない

これは精神科で特に注意が必要なポイントです。

✓診断名があっても

✓通院していても

医師が「労務不能」と判断していなければ、支給されません。

例えば、

  • 「体調を見ながら働いてもよい」
  • 「軽作業なら可能」

といった判断の場合、
傷病手当金が認められないケースがあります。

👉 診断書の内容・意見書の書き方が非常に重要です。

申請書の記載内容に不備・矛盾がある

意外と多いのがこのケースです。

  • 会社の記載内容と医師の意見が食い違っている
  • 出勤日と休業日の記載が合っていない
  • 病名や日付が曖昧

こうした場合、
「本当に働けなかったのか判断できない」
として不支給になることがあります。

待期期間(最初の3日)を満たしていない

傷病手当金は、
連続する3日間の待期期間 を経てから支給されます。

  • 土日を含めてOK
  • 有給・欠勤どちらでもOK

ただし、この3日が成立していないと、
その後の支給も始まりません。

「もらえない」と言われたときの対処法

もし傷病手当金がもらえなかった場合でも、
次のような選択肢があります。

  • 申請内容の見直し・再提出
  • 医師の意見書内容の再確認
  • 会社・健康保険組合への問い合わせ
  • 社会保険労務士への相談

また、状況によっては、

  • 障害年金
  • 生活保護
  • 傷病手当金以外の制度

が適しているケースもあります。

院精神科からのアドバイス

傷病手当金は、「病名」だけで決まる制度ではありません。

  • いつから
  • どの程度
  • どの仕事が
  • なぜできないのか

これを医療と労務の両面から説明できるかが重要です。

精神科では、
症状だけでなく、仕事の内容や生活状況も含めて
主治医にしっかり伝えることが大切です。

まとめ|傷病手当金がもらえない理由は必ずあります

傷病手当金がもらえないケースは、決して珍しくありません。

しかし多くの場合、

  • 条件を知らなかった
  • タイミングが合っていなかった
  • 書類の内容が不十分だった

という理由によるものです。

「もらえない=不正ではない」
「もらえない=あなたが悪いわけではない」

制度を正しく知り、必要であれば別の支援につなぐことが、生活を守る第一歩です。


✅参照

 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139

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