うつに効く食べ物とは?心と脳を元気にする実践ガイド【医師監修】

・うつに効果的な栄養:トリプトファン/オメガ3/ビタミンB群・D/鉄・葉酸・Mg/発酵食品
・実践:朝=ヨーグルト+バナナ/週2回=青魚/間食=素焼きナッツ
・控える:精製糖・高GI、超加工食品・15時以降のカフェイン・過度なアルコール
「うつのとき、何を食べるかで気分が変わるって本当?」
答えはイエス。こころと食事は密接に関係し、特定の栄養を意識することで気分の安定が期待できるといわれています(※1)。
本記事では「うつに効く食べ物」をやさしく解説し、避けたい食品とコンビニ活用法、継続のコツまでしっかりお届けします。
うつに効く5つの栄養素と食べ物
うつに効く食べ物として、研究で効果が報告されている代表的な栄養素と食材をご紹介します。
うつに効く食べ物|栄養素の働きと代表食品(理解用)
栄養素 | 働き | 代表的な食品 |
---|---|---|
トリプトファン | セロトニンの材料になり、気分を安定させる | 卵、大豆製品、魚、肉、ナッツ |
オメガ3脂肪酸 | 脳の情報伝達を助け、炎症を抑めて気分の安定を後押し | 青魚、サバ、イワシ、サーモン、くるみ |
ビタミンB群・D | エネルギー代謝・神経伝達をサポート/脳の機能維持に関与 | 豚肉、レバー、卵、納豆、きのこ |
鉄・葉酸・マグネシウム | 酸素運搬や神経の安定に必須。不足で疲労・気分低下 | 赤身肉、レバー、小松菜、緑黄色野菜、ナッツ |
発酵食品 | 腸内環境を整え、セロトニン産生を後押し | 味噌、納豆、キムチ、ヨーグルト、ぬか漬け |
ポイント|栄養素を摂るときの工夫
トリプトファン:体内で合成できないため、必ず食事から摂る必要があります。炭水化物やビタミンB6と一緒に摂ると脳に届きやすくなります。
オメガ3脂肪酸:EPA・DHA(魚油)は加熱OKですが、えごま油やアマニ油など植物油は非加熱で仕上げに使うのがおすすめです。
ビタミンB群・鉄:不足しやすく、疲労感や無気力と関係します。B群は毎日こまめに、鉄はビタミンCと一緒に少しずつ補いましょう。
ビタミンD:魚やきのこと一緒に、日光浴での補給も忘れずに。
発酵食品:「腸と脳をつなぐ」脳腸相関が注目されており、腸内環境が整うことで気分の安定にも良い影響があります。ヨーグルトや納豆など日常に取り入れやすい食品から始めましょう。
うつに効く食べ物の目安量(すぐ実践できる早見表)
栄養素 | 具体的な食材例 | 摂り方の目安 |
---|---|---|
トリプトファン(セロトニンの材料) | 納豆・卵・バナナ | 卵1個+納豆1パック/日 |
ビタミンB群・D(脳の働きをサポート) | 豚肉・レバー・きのこ | 毎食で少量 (例:豚肩ロース・納豆・卵) |
鉄・葉酸・マグネシウム(不足しがち) | ひじき・ほうれん草・ナッツ | 鉄は週2–3回「赤身orレバー小量」 /Mgはナッツ20–30g/日 |
オメガ3脂肪酸(気分安定) | 青魚・くるみ・えごま | EPA+DHA合計500–1,000mg/日相当(サバ缶1/2〜1缶目安) |
発酵食品(腸内環境) | ヨーグルト・味噌・キムチ | 1日1品(朝と夜に分けると良い) |
うつに効く食べ物を日常に取り入れる3つの工夫
体に良い食べ物でも、毎日続けるのは簡単ではありません。
ここでは、うつに効く食材を無理なく日常に取り入れるための3つの工夫をご紹介します。
朝食でリズムを整える|ヨーグルト・バナナ
バナナ:セロトニンの材料「トリプトファン」+エネルギー補給に
ヨーグルト:腸内環境を整えて、気分の安定をサポート
どちらもそのまま食べられ、準備不要。食欲がない朝でも「ひと口」から始めやすいです
間食で気分を安定させる|ナッツ・ダークチョコレート
ナッツ:マグネシウムやオメガ3脂肪酸が豊富で、ストレス対策にも有効。 ・ダークチョコ:ポリフェノールによるリラックス効果が期待できる
甘いものを”我慢”するより、「質の良いものを少量」楽しむ方が満足度が高く、続けやすくなります。
和食・地中海食で栄養を補う|魚・野菜・玄米
和食は腸と脳を整える
和食には味噌や納豆などの発酵食品、大豆製品、きのこや海藻などが自然に含まれ、腸内環境を整えるのに役立ちます。
玄米はビタミンB群やマグネシウム、食物繊維、鉄などの栄養が豊富です。
一方、玄米は消化に負担がかかることもあり、体調や好みによって合う・合わないがあります。
白米が好きなら、たまに雑穀を混ぜてみるだけでも十分です。
地中海食は「気分が安定しやすい食習慣」
地中海食は、青魚、オリーブ油、野菜、ナッツ、雑穀などがバランスよく組み合わさった食事スタイルです。
うつの予防に効果があるとされる研究もあり(※1)、世界的に注目されています。
これらの食材が相乗効果を発揮し、脳の炎症を抑え、神経伝達物質の働きをサポートすることで、気分の安定に繋がると考えられています。
加工食品を控え、自然な食材を中心とする点も大きな特徴です。
避けるべき食品と注意点:うつを悪化させないために
うつ症状の改善には、「何を食べるか」と同じくらい「何を控えるか」も大切です。
ここでは、気分の波や体調の不調に影響しやすい食品とその避け方を、わかりやすくご紹介します。
精製糖・高GI食品|血糖変動で気分が乱れやすい
精製糖や高GI食品は、食後の「血糖の乱高下」を招き、イライラ・だるさ・気分の落ち込みを感じやすくします。
(GI=その食品がどれくらい早く血糖を上げるかの指標。高GIはおおむね70以上)
注意したい高GI食品の見分け方🔍
・「白い」または「甘い」:精製された炭水化物や砂糖が多い食品
・「すぐに元気になる」感覚:食べた後に血糖値が急上昇しやすい
代表的な高GI食品の例
・甘いもの全般:白砂糖、ジュース、スイーツ
・白い主食:白米、白いパン、うどん
・菓子類:菓子パン、ドーナツ、ケーキ、飴、グミ、チョコレート
・飲料:清涼飲料水、スポーツドリンク、果汁ジュース
食べ方のヒント
・血糖値が緩やかに上がる食品を選ぶ
→雑穀入りごはん・玄米・、全粒粉パン、そばなど

覚えておきたい一言
「血糖値が安定していると、気分も安定しやすい」
カフェイン・アルコール|不安・睡眠の質を下げる
カフェインやアルコールは、一時的に気分が上がっても、その後の落ち込みや睡眠の質の低下を招きやすくなります。
例
・コーヒー、エナジードリンク、緑茶(夕方以降)
・ビール、ワイン、ハイボールなどのアルコール類
日中、少量だけに留め、午後15時以降はカフェインレスや炭酸水などに切り替えるのがおすすめ。
アルコールは休肝日を週2回ほど設け、就寝3時間前以降は控えましょう。


超加工食品・トランス脂肪酸|体内で慢性炎症を起こしやすい
トランス脂肪酸や「超加工食品」と呼ばれる食品群は、腸内環境やホルモンバランス、自律神経に悪影響を及ぼし、慢性的な不調や気分の落ち込みを引き起こしやすくなります。
超加工食品 見分け方のヒント 🔍
✓原材料が5つ以上
✓元の食材の形が分からない
✓カタカナの添加物が多い
代表的な超加工食品の例
・スナック菓子: ポテトチップス、クッキー、ガム
・インスタント食品: カップ麺、レトルト食品、冷凍ピザ
・加工肉: ハム、ソーセージ、チキンナゲット
・菓子パン・シリアル: 菓子パン、砂糖入りシリアル、ドーナツ
・調味料・その他: ドレッシング、インスタントスープ、マーガリン
食べ方のヒント
元の食材の形が分かる食品を選ぶ
→魚の切り身、豆腐、卵、カット野菜、納豆など
調理もシンプルに
→「切る・焼く・和える」など。
調理工程が少ないほど、余計な添加物や油が入らず体に負担をかけません。
素材そのものの栄養を活かしたシンプルな調理で、体調が安定しやすくなります。
脂質・ナトリウムの過剰|むくみ・倦怠感の一因に
注意したい高脂質・高塩分食品🔍
✓揚げ物が多い
✓味付けが濃い
✓油でコーティングされている
代表的な高脂質・高塩分食品の例
・揚げ物: 唐揚げ、天ぷら、フライドポテト
・麺類: ラーメン、焼きそば、カップ焼きそば
・ファストフード: ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ
・加工食品: 味付き肉、惣菜、市販弁当
・スナック: ポテトチップス、せんべい、ナッツ(味付き)
食べ方のヒント:薄味でシンプルな調理法にする
・蒸し物、汁物、焼き物など
脂質・ナトリウムを控えるコツ
→味付けは「ポン酢・出汁・香味野菜」にシフト
✓揚げ物より「蒸す・茹でる・焼く」など、シンプルな調理法を選ぶ
✓コンビニでは「塩分表示」をチェック
塩分や脂質が多い食事は体のだるさや疲れやすさにつながり、日中の集中力や活動量にも影響します。
うつに効く食べ物|避けるべき食品と影響(スマホ対応)
避ける食品 | 代表例 | 体への影響 |
---|---|---|
精製糖・高GI食品 | 白砂糖、ジュース、菓子、白米、スイーツ | 血糖の乱高下 →気分不安定、だるさ、イライラ |
カフェイン・アルコール | コーヒー、エナジードリンク、緑茶(夕方以降)、お酒 | 不安増加、睡眠の質低下、依存性リスク |
超加工食品 | カップ麺、ポテチ、菓子パン、冷凍ピザ、加工肉 | 慢性炎症、腸内環境悪化、ホルモン・自律神経に影響 |
高脂質・高塩分 | 揚げ物、ラーメン、ファストフード、惣菜 | むくみ・倦怠感、血圧上昇、集中力低下 |
人工甘味料・添加物 | ダイエット飲料、ガム、低カロリー菓子 | 腸内細菌バランス悪化、味覚の鈍化 |
避けるべき食品の置き換え例
元の食品(避けたい) | おすすめ置き換え | 注意点 |
---|---|---|
精製糖・高GI食品 | 雑穀ごはん/全粒粉パン/そば/フルーツ | 空腹時の白砂糖・甘い飲み物は特に避ける |
カフェイン飲料 | ハーブティー/麦茶/炭酸水/デカフェ | 15時以降はカフェインレス |
アルコール | ノンアル飲料/炭酸水+レモン/温かいお茶 | 週2回は休肝日/就寝3時間前は控える |
超加工食品 | 魚の切り身/豆腐・納豆/卵/カット野菜 | “元の素材が分かる”食品を必ず1品入れる |
高脂質・高塩分の惣菜・外食 | 蒸し物/汁物/焼き魚/手作りおにぎり | 塩分・脂質表示を確認/ポン酢・香味野菜で味付け |
人工甘味料・添加物多め | 天然甘味料(はちみつ・メープル)/無添加食品 | 原材料表示は「5つ以下」を目安に選ぶ |
うつに効く食べ物|期待できる3つの変化
「本当に食事で変わるの?」という声もありますが、心と身体は密接につながっています。
ここでは、実際によく見られるポジティブな変化を3つだけ紹介します。
腸の調子が整うと気分も安定する
腸内環境が整うと、セロトニンの生成がスムーズに。
便通が安定することで、体も心も軽くなる感覚があります。 発酵食品・食物繊維が◎。
睡眠の質が上がり朝が楽になる
ビタミンB群やトリプトファンは、睡眠ホルモンにも関与 ・寝つき・寝起きが改善しやすくなります。
朝にバナナや納豆、夜に温かい味噌汁がおすすめ。
継続的な食事改善が気分を安定させる
急に劇的な効果より、「少しずつ不調が減る」体感が多い です。「ちゃんと食べられている」という安心感も大切 。
まずは1日1食、整えるだけでも変化のきっかけに
うつに効く食べ物を続けるコツ(1分で読めます)
気分が不安定なときは、食事を整えること自体が負担に感じるもの。
でも、「できる日だけ」「ひとつだけ」でも十分効果があるので大丈夫。
お菓子やファストフードを食べる日があってももちろんOK。あれもダメ、これもダメと制限しすぎると続かなくなります。
次の数日で少しずつ整える意識を持ちましょう。
無理のないスタート|「コンビニで1品」から始める小さな革命
菓子パン → ナッツ、甘い飲み物 → 無糖飲料など、ほんの1品だけ変えるだけでOK 。
「ちゃんとした食事」より、「昨日よりちょっと体にいい」が大事です
いつもの選択をひとつ変える。それが、体調と気分の変化につながります。
記録で振り返る|スマホ写真1枚が教えてくれる体調変化
食べたものや食べられた量を、スマホでパッと撮って残すだけ 。「調子が良かった日のごはん」が、あとから振り返るヒントになります
書かなくてもOK。”見る記録”の方が続く人も多いです。
治療と並行して整える|食事も治療の一部
「食事だけでなんとかしなきゃ」と思うと、かえって苦しくなります。薬や睡眠、活動の調整と組み合わせることで、体も心も回復しやすくなります
食事は全体の土台。自分を責めず、できるところからで大丈夫です。
季節・体調に合わせる|夏は水分と塩分、冬はビタミンDを意識
夏は発汗で失われるミネラル補給に、味噌汁や梅干し、麦茶がおすすめ。
冬は日照不足によるビタミンD低下対策に、青魚やきのこ、日光浴を意識すると◎
身体の声に合わせて、食べ方もゆるく調整していきましょう。
うつに効く食べ物|よくある質問(FAQ)
ここでは、うつに効く食べ物で「よくある質問」に回答します。
まとめ|食べ物から始める心のセルフケアと受診のすすめ


心の健康を保つために、まずは食事から小さな一歩を始めてみましょう。今できることだけで大丈夫です。
この記事のまとめ(要点)
①積極的に摂りたい栄養素・食品
- たんぱく質/トリプトファン:卵、乳製品、大豆製品、魚、肉、バナナ、ナッツ
- オメガ3脂肪酸:青魚(サバ・イワシ・サーモン)、くるみ、えごま・アマニ油
- ビタミンB群・ビタミンD:豚肉、レバー、納豆、玄米、鮭、サンマ、きのこ類
- 腸内環境を整えるもの:発酵食品(ヨーグルト、味噌、納豆、キムチ)
②避けたいもの・控え方
- 精製糖のとりすぎ(お菓子・ジュース)は血糖の乱高下につながりやすい
- カフェイン・アルコールは様子を見て控えめに(詳細は院内記事へ導線)
- 超加工食品に偏らない(菓子パン、スナック、カップ麺、加工肉など)
-“元の素材がわかる食事“を意識する
③続けやすい工夫
- 常備品:冷凍野菜、サバ缶、ゆで卵、ヨーグルト、素焼きナッツ
- ミニ習慣:「1日1つ」でOK。主食は低GIに、発酵食品を1日1品 など
→自分に合った「継続できる型」を見つける
困ったときは専門家へ相談しよう
食事は回復を支える土台ですが、それだけで解決しないこともあります。
症状が続く、つらさが強い、睡眠や食欲が大きく乱れるときは、無理をせず受診・相談を。
相談すること自体が回復の第一歩です。あなたは一人ではありません。
参考
・うつ病患者のリゾリン脂質代謝異常を発見 ~新たな治療薬とオメガ3系脂肪酸を含む栄養療法への期待~
(国立精神・神経医療センター)
・腸から脳の健康を考える ビフィズス菌A1株による認知機能改善作用
小林洋大,清水(肖)金忠,久原徹哉2019
・https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7322666/
【この記事の監修医】
今雪 宏崇
(精神科医・川口メンタルクリニック院長)
精神科専門医。地域のメンタルヘルス支援に携わる。
外来診療に加え、訪問診療にも注力し、通院が難しい方へのサポートも行っている。
▶ 詳しいプロフィールは 院長紹介ページ をご覧ください。