「何度も確認しちゃう」を改善!その不安、強迫性障害かもしれません

「鍵は閉めたかな?」「ガス栓、本当に大丈夫?」

強迫性障害(OCD)は日本人の12か月有病率が約1.2%※1、さらに医療機関を受診している不安関連疾患の患者は推計124万人(女性78万人・男性46万人)に上り※2、決して珍しい悩みではありません。

平均発症年齢は19〜20歳、4人に1人は14歳以前に症状が始まるといわれ※1、放置すると学業や仕事に大きな影響が及びます。

本記事では“気になる”が止まらない仕組みと、今日から試せるセルフケア、専門治療の選択肢を解説します。

目次

なぜ止まらない?「確認しすぎる」を繰り返す心のメカニズム

確認行為は「不安を減らすための衝動」であり、本人の意志だけでは止めにくい脳のクセです。

強迫性障害(OCD)では恐怖を感じる場面を避けたり、確認を繰り返したりすることで一時的に安心しますが、長期的には不安が強まりループが固定化します。

背景にはセロトニン系の機能低下完璧主義的思考が関与していると考えられています。

単なる心配性じゃない?日常に潜む「強迫性障害の初期症状」チェックリスト

次のような行動が「やりすぎだ」と自覚しているのに止められず、時間や生活に支障が出ている場合は。強迫性障害(OCD)の可能性があります。

・ドアの鍵、ガスの元栓、電気の消し忘れなどを繰り返し確認してしまう。

・汚れや細菌が怖くて過剰な手洗いや掃除を続けてしまう。

・物の配置や数字、順序に強いこだわりがあり、崩れると不安が高まる。

・「誰かに危害を加えるのでは」と非現実的な恐怖が頭から離れない。

・決まった手順や回数の儀式行動を守らないと落ち着かない。

確認行為:日常生活を妨げる繰り返しの行動

一度確認しても安心が続かず「もう一度だけ」と回数が増え、外出や就寝が遅れる悪循環に陥ります。安心感は短時間しか続かないため、結局は不安の総量が増えやすいのが特徴です。

不潔恐怖と洗浄:日常生活を脅かす過剰な清浄行為

洗いすぎで皮膚がボロボロにもかかわらず手洗いをやめられない様子

目に見えない汚れや細菌を過大評価し、手洗いや入浴を何度も繰り返します。時間と体力を奪ううえ、皮膚炎や対人回避を招きやすい点が問題です。

物の配置や数字へのこだわり:心の中の「完璧」への執着

“完璧に揃った感覚”が一瞬で薄れ、並べ直しを続けるうちに大切な時間が奪われます。疲労と達成感の薄さがストレスを増幅させます。

加害恐怖:理性では抑えられない「もしも」の恐怖

「車で人をひいてしまったのでは」と何度も同じ道を戻るなど、低確率の危険に強い不安を抱きます。繰り返す確認は安心につながりにくく、生活範囲の縮小を招きやすい症状です。

強迫性障害は治る?行動を妨げる「何度も確認」の根本原因と治療法

OCDは治療可能です。薬物療法で不安を下げ、認知行動療法(CBT)で「確認しない経験」を積む併用が推奨されています。

薬物療法:脳のバランスを整え、症状を穏やかにする

SSRI(フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラムなど)が第一選択です。

副作用を確認しながら4〜6週間で有効量へ増量し、効果発現には6〜12週間かかります。寛解後も再発防止のため6か月以上継続し、効果不十分な場合は他のお薬による増強療法を検討することがあります。

自己判断での断薬は症状悪化のリスクがあります。減薬を希望する場合は、医師と相談しながら段階的に調整しましょう。

精神療法(認知行動療法):考え方のクセを修正し、行動を変える

認知行動療法(CBT)では自動思考を検証し「不安=危険ではない」ことを学習します。

曝露反応妨害法(ERP)では、不安階層表を基に軽い課題から着手し、確認行為をあえて行わず不安が自然に下がるのを体験します。

平均12〜20回のセッションと自宅課題の反復で、強迫観念の強度と確認の頻度が持続的に減少することが多く報告されています。

ひとりで悩まないで!不安を和らげるセルフケアと専門家のサポート

今すぐできる!「何度も確認」を減らすセルフケアのヒント

深呼吸:4秒吐いて4秒吸う腹式呼吸を5回。自律神経が整います。

思考の書き出し:不安と「起きる確率・対処策」を並べて客観視。

十分な睡眠:就寝90分前の入浴とスマホ断ちで7時間以上の睡眠を確保。

適度な運動:20分の早歩きやヨガで気分をリセット。

丁寧な一度の確認:音・触感・声で「完了」を五感に刻む。

趣味を楽しむ:没頭する時間が脳を休ませます。

気になっても放っておく練習:5〜10分我慢し「何も起きなかった」を体験。

家族や身近な人ができるサポートは?適切な声かけとNG対応例

強迫性障害(OCD)の確認行為は本人の意思で止めにくい症状です。責めずに共感し、安心材料を一緒に増やす姿勢が重要です。

適切な声かけ例

・「一度だけ確認して終わったら深呼吸しよう」

・「気持ちはわかるよ。でも5分別のことをしてみる?」

・(成功体験後)「今は一度で済んだね」

やってはいけない対応

・否定したり怒鳴ったりして責める

・「そんなことしなくて大丈夫」と不安を軽視する

・毎回代わりに確認し儀式を肩代わりする

本人が不安を言語化できたら

話してくれてありがとう

と伝え、状況に応じて専門医受診を提案しましょう。

専門家と歩む改善の道:当院の診察とカウンセリング

セルフケアで足踏みする場合は受診が回復への近道です。

薬物療法と、ご希望があればカウンセリングを併用し、「一度の確認で終わる練習」を段階的に行い、家庭や職場での対処計画も一緒に設計することも可能です。

現在当院のカウンセリングは予約が取りづらいため、日程に余裕を持ってお申し込みください。

よくある疑問を解消!治療期間や再発防止のポイント

個人差が大きく、軽症なら数ヶ月、深刻な場合は1年以上かけてじっくり取り組みます。大切なのは“完璧なゼロ強迫”より“日常生活が回るレベル”を目標に、段階的にゴールを設定することです。

治療期間はどれくらい?

個人差が大きく、軽症なら数ヶ月、深刻な場合は1年以上かけてじっくり取り組みます。大切なのは“完璧なゼロ強迫”より“日常生活が回るレベル”を目標に、段階的にゴールを設定することです。

薬はずっと飲み続けないといけないの?

症状が安定したからと、突然自己中断すると再燃リスクが高まります。減薬を希望する場合は医師に相談し、経過観察をしながら徐々に減量を目指すようにしましょう。

再発を防ぐコツは?

ストレスが溜まると古い強迫観念が出現しやすいため、セルフケアのルーティンを維持し、早めに「最近確認が増えたかも」と気づく自己モニタリングが鍵。

通院費用はどれくらいかかる?

初診の費用は3000円前後、再診は1500円前後が一般的です。採血などの検査がある場合はプラス3000円程度かかります(検査項目により金額が変わります)。

通院が長期に渡る場合は、自立支援医療制度を利用することで医療費を軽減することができます。

ご希望の場合は受付にお声かけください。

まとめ:その「気になる」をひとりで抱え込まないために

確認を何度重ねても落ち着かないのは、あなたの性格ではなく “脳の仕組み” の影響です。

セルフケアと専門的なサポートを組み合わせることで、少しずつ生活が改善し、失っていた時間と心のゆとりを取り戻してみませんか?

まずは「話を聞いてほしい」という気持ちだけで十分です。あなたの毎日が軽やかになるよう、一緒に考えていきましょう。

出典
※1 国立精神・神経医療研究センター「精神疾患の基礎知識 — 不安を特徴とする精神疾患群」(2024)
※2 厚生労働省「令和2年(2020)患者調査」
(統計引用行:12か月有病率1.2%・平均発症年齢19〜20歳・25%は14歳以前 → PDFL8/推計患者数124万人・男女内訳 → PDFL0

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