自閉症は職場で迷惑?!誤解される理由と対処法を解説します

自閉症スペクトラム(ASD)は、生まれつき「人との関わり方」や「コミュニケーション」に特徴があり、物事に対する強いこだわり得意・苦手がはっきりしている発達特性のことです。

例えば、相手の気持ちを読み取るのが苦手だったり、急な予定変更に強い不安を感じたり、音や光などに非常に敏感だったりします。一方で、自閉症スペクトラム(ASD)の人の中には、好きなことに集中するとものすごい能力を発揮する人も多くいます。

これらは病気ではなく「個性のひとつ」と言えますが、周りと違うことで理解が得にくかったり、誤解されやすいため、本人も周囲もストレスを感じることがあります。

自閉症スペクトラム(ASD)についての詳しい解説はこちら

目次

自閉症の特性が職場で迷惑と言われる理由3選。

自閉症スペクトラム(ASD)の人は、コミュニケーションや仕事の進め方に特徴があります。

しかし、その特性が職場で「協調性がない」「指示が伝わらない」と誤解されることがあります。本人に悪気はなくても、周囲とのすれ違いが原因でトラブルに発展するケースも少なくありません。

ここでは、自閉症のどのような特性が「迷惑」といわれるか、5つの具体例を交えながら解説していきます。

コミュニケーションスタイルの特徴によるすれ違い

自閉スペクトラム症(SD)の人は、人と会話したり気持ちを読み取ったりすることが苦手な場合があります。

以下に例を挙げて説明します。

言葉でのコミュニケーション

■ 自分ばかり一方的に話してしまう
■ 冗談や皮肉が伝わらない
■ 細かく説明しすぎたり、逆にあいまいな言葉が分かりにくい

表情やしぐさでのコミュニケーション

■ 人と目を合わせるのが苦手
■ 相手がどう感じているのか、表情や雰囲気から読み取ることが苦手

共感・共有体験

■ 周りの人にあまり興味を持たない
■ 友達と一緒に楽しむより、一人で好きなことをしている方が落ち着く

こうした特徴から、相手との間に不調和が生じることがあります。しかし、自閉症スペクトラム(ASD)の特性を知って接し方を工夫すれば、相手を理解することができるようになります。

過集中やこだわり行動

自閉スペクトラム症(SD)の人は、好きなことに夢中になりすぎてしまうことがあります。これは「過集中」と呼ばれ、良い面もありますが、困ることもあります。

ここでは、過集中による良いことと、気をつけたいことを紹介します。

・過集中の良いところ

■ 一つのことに長い時間、集中して取り組める
■ 好きなことや得意なことでは、素晴らしい能力を発揮できる

・過集中で気をつけたいところ

■集中しすぎて ご飯を食べるのを忘れたり、夜ふかしして体調をくずすことがある
■ 夢中になっているときに話しかけられても気づかず、誤解されることがある
■ 集中しているときに止められると、怒り出すことがある

休む時間をつくることも大切です。周りの人も様子を気にして時々声かけをしてあげましょう。

感覚過敏による体調不良や業務効率の低下

自閉スペクトラム症(SD)の人の中には、音や光、においなどにとても敏感な人がいます。「感覚過敏(かんかくかびん)」と呼ばれる状態で、本人にとっては大きなストレスになります。

例えば、オフィスで次のようなことが起こる可能性があります。

■蛍光灯やパソコンの画面がまぶしくて目が痛くなる
■ 周囲の電話の声や紙のすれる音、タイピング音などが気になり、仕事に集中できない
■ 制服や着ている服の肌触りが不快に感じて、落ち着いて仕事ができない
■ 他人の香水や柔軟剤、昼休みの弁当のにおいで気分が悪くなる

こうした刺激が絶えず続くと、職場にいるだけでクタクタになってしまいます。しかし、周囲の人には理解されにくく、「やる気がない」と誤解されることもあります。

周りが自閉スペクトラム症(SD)の特性を理解し、静かな席に替える、光や音を防ぐグッズを使うなど、働きやすい工夫をすることで、負担を減らせることがあります。何かできることがないか考えてみましょう。

 自閉症の方と円滑に働くためのコツと対処法5選

では、自閉症スペクトラム(ASD)の人と働くときはどのような点に留意すればよいのでしょうか?

コツと対処法を5つ説明します。

指示はできるだけ具体的に。曖昧な表現を避ける

自閉症スペクトラム(ASD)の人に仕事や作業を頼むとき、「なるべく早く」「適当にやっておいて」など、曖昧で具体性のない言い方をすると、何をどうすればいいのか分からなくなってしまうことがあります。

特に、自閉症スペクトラム(ASD)や発達障がいの人は、言葉をそのまま受け取ることが多いため、「何を」「いつまでに」「どんなふうにやるのかを、できるだけ具体的に伝えることが大切です。

例・仕事を頼むとき

「午後の会議に使う資料をコピーしておいて」

自閉症スペクトラム(ASD)の人は、「午後の会議が〇時からで、出席者が何人だから必要なのは〇部。でも念のため1~2部多めにコピーして、会議室に置いておこう」などと考えて行動するのが苦手な場合があります。

そのため、具体的に「この資料を5部、今日の12時までにコピーして」と指示すると取り組みやすくなります。

また、「この資料を5部、今日の12時までにコピーして会議室の席に並べておいて」と、一度にたくさんのことを言われると、頭が混乱してわからなくなってしまうこともあります。

対応策として、複数の仕事を頼む際はタスクを細分化して、ひとつずつ伝えてみましょう。まず「この資料を5部、12時までにコピーして」とお願いし、そのあとに「コピーした資料を会議室の席に並べて下さい」とお願いすると、相手が理解しやすくなります。

自閉症スペクトラム(ASD)の人に仕事を頼むときは、伝え方を少し工夫するだけで、相手が理解しやすく、仕事がスムーズに進むようになります。

②タスクを「見える化」、優先順位を明確にする

自閉症スペクトラム(ASD)の人は、急な予定の変更やタスクの処理に混乱しやすく、職場でトラブルになることがあります。

一方で、自閉症スペクトラム(ASD)の人は、目で見て理解するのが得意なことが多いです。そのため、やるべきことを表やリストに書いたり、図や色を使って視覚的に示したりすると、分かりやすくなり、先の予定を考えやすくなります。

ポイント

✅指示はひとつずつ、具体的に。曖昧な表現は避ける

✅ホワイトボードや付箋、チェックリストを活用し、タスクを視覚化する

「いつ」「何をするか」を書き出し、優先順位をつける

このように、タスクを「見える化」し、優先順位を明確にすることで、周囲とのトラブルを減らすことができます。書き出す以外にも、タスク管理のアプリやタイマーなどを活用することで、スムーズに仕事を進めやすくなります。

職場だけでなく、日常生活でも役立つ工夫ですね。

本人の得意・不得意を理解し、適切な配置をする

自閉症スペクトラム(ASD)の方は、得意なことと苦手なことがはっきり分かれていることが多いため、それを理解したうえで適切な業務を任せることが大切です。

まずは、本人がどんな業務が得意で、何が苦手なのかを客観的に分析しましょう。その上で、普段の会話の中で「どんな作業がやりやすい?」「こういう仕事はどう?」とさりげなく聞くことで、本人の負担を減らし、スムーズに働ける環境を作ることができるようになります。

また、仕事の配置を考える際には、自閉症スペクトラム(ASD)の特性だけでなく、本人の希望や興味も尊重することが大切です。得意なことを活かせるポジションにつくことで、自信を持って働きやすくなり、職場全体の生産性も向上します。

④仕事を任せきりにしない

自閉症の人は、決められたルールを守るのが得意ですが、急な変更や予想外のミスに気づきにくいことがあります。そのため、仕事を一人で任せるのではなく、周りがサポートできる仕組みを作ることが大切です。

ポイント

ダブルチェックをする

  • 作業が終わったら、別の人が確認することで、ミスがあっても早期に発見ができる。

こまめに声をかける

  • 「何かわからないことある?」と定期的に聞くことで、問題を早期に発見できる。

ミスを責めず、一緒に原因を考える

  • 失敗を本人のせいにせず、なぜ失敗したかを一緒に考え、失敗の原因を排除する

このように、サポート体制を強化することで、本人も安心して業務に取り組めるようになります。

薬物療法を検討する

自閉症スペクトラム(ASD)の人は、仕事や学校で対人関係のすれ違いや環境の変化に強いストレスを感じ、困りごとが続く場合に薬物療法が有効となるケースもあります。

自閉症スペクトラム(ASD)そのものを治す薬はありませんが、不安感が強い、落ち着きがない、パニックになりやすい、集中しづらいといった症状に対して、不安を和らげる薬や、注意力を高める薬が処方されることがあります。

服薬により気持ちが安定し、仕事や学業に取り組みやすくなることがありますが、薬の効果や副作用には個人差があり、すぐに効果を感じる人もいれば、時間をかけて薬の種類や量を調整する必要がある人もいます。

自己判断で薬を増減することはせず、医師でよりにその都度現状を伝え、相談しながら治療を続けることが、よりよい生活改善につながります。

薬物療法は、周囲の理解や環境調整と合わせて取り組むことも大切です。

まとめ|自閉症の特性を理解し、働きやすい職場づくりを目指そう

自閉症スペクトラム(ASD)の人は、コミュニケーションの取り方や仕事の進め方に特徴があります。

そのため、周囲と誤解が生まれやすく、職場で「指示が伝わらない」「仕事ができない」「迷惑だ」と思われてしまうことがあります。特に、会話のすれ違い過集中感覚過敏などの特性が、職場でのトラブルにつながることもあります。

しかし、これらの問題は、適切な対策を取ることで改善が可能です。

例えば、指示は具体的に伝えるタスクを「見える化」する得意・不得意を考慮した仕事の配置を行うなど、ちょっとした工夫で仕事がスムーズになります。また、仕事を一人に任せきりにせず、ダブルチェックやこまめな声掛けをすることで、ミスを防ぎやすくなります。

自閉症スペクトラム(ASD)の特性を理解し、適切なサポートを行うことで、皆が安心して働ける環境が整い、職場全体の生産性の向上が期待できます。

参考 https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=2988

   https://eachrich.jp/10628

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