生活保護とは?精神疾患を抱えた方が知っておきたい支援制度
生活保護は、生活に必要な最低限の支援を提供するための制度です。精神的な疾患を持つ方々にとって、この制度は生活の安定を支え、治療に専念できる環境を作るために非常に重要です。この記事では、生活保護の申請方法、受けられる支援内容、そして申請時の注意点について、わかりやすく解説します。
そもそも生活保護とは?
生活保護は、一定の収入や資産がなく、憲法25条に保障されている最低限度の生活を送るための公的な支援です。これは、日本の社会福祉制度の一環として提供され、国民全員が必要な支援を受けられるように設計されています。
つまり生活保護は、われわれのセーフティネットとなります。
精神疾患と生活保護
精神的な疾患があると、仕事を続けることが困難になることが多いです。治療のために通院が必要であったり、精神的な症状が強いために日常生活に支障があったりすることがあります。このような場合、生活保護は非常に大きな支援となります。精神的な病気であることが支援を受ける理由になるため、特に生活に困窮している方々にとっては、生活保護が生活の安定をもたらす鍵となります。
生活保護を受けるための条件
生活保護はすべての人に支給されるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。精神疾患を持つ方も、以下の条件に該当すれば生活保護を受けることができます。
収入がない、または極めて少ないこと
生活保護を受けるためには、収入が最低限の生活を送るために足りていないことが必要です。自分や家族の収入、資産を含めた生活状況が最低限度の基準を下回っていると認められると、生活保護が支給されます。
したがって、働いている場合も、最低限度の基準を下回っている場合は、審査により、生活保護を受けることができます。
動けない、または働くことが困難なこと
精神疾患によって、働くことができない場合や働けない状態にあると認められた場合も、生活保護の対象となります。この場合、医師の診断書や病歴が証拠となり、審査に役立ちます。
扶養義務者の支援を受けられないこと
夫婦、親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から援助が受けられるときは、そちらを優先しなければいけません。
他の公的支援を受けていないこと
生活保護は、他の収入や支援が不足している場合に支給されるため、例えば障害年金や失業手当を受けている場合、最低限度の基準額からこれらの支給額を差し引いた分を生活保護費として支給されます。
生活保護の申請方法
生活保護を受けるためには、各自治体の福祉事務所に申請を行う必要があります。申請方法や必要書類について具体的に解説します。
※「福祉事務所」は通称で、実際は役所の「生活福祉課」などの名称であることが多いです。
福祉事務所への相談と申請
申請を行う前に、まず福祉事務所に相談し、手続きの流れや必要書類を確認しましょう。相談は無料で行われ、親身にサポートしてもらえます。福祉事務所の担当者が、具体的なアドバイスをしてくれるので、心配せずに相談しましょう。
【必要種類には以下のものがあります】
・身分証明書(運転免許証やマイナンバーカード等)
・収入や資産を証明する書類(給与明細書、預金通帳のコピーなど)
・家族構成や住民票(家族が同居している場合、その人数や収入状況が重要です)
※上記の書類が用意できない事情がある場合は、これらの書類がなくても申請できます。
また、福祉事務所は申請者の申請を断ることはできません。
生活保護の受給の可否は、申請後の審査にて決定されます。
福祉事務所での審査
申請者の生活状況の調査や資産調査(預貯金、生命保険等)等を福祉事務所が行った上で、申請日から原則14日以内(調査に日時を要する特別な理由がある場合は最長30日)に生活保護を受給できるか、できないかの回答がなされます。
生活保護の支援内容
生活保護を受けることで、以下のような支援が提供されます。
生活扶助
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱水費等)
住宅扶助
アパート等の家賃
教育扶助
義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助
医療サービスの費用
介護扶助
介護サービスの費用
出産扶助
出産費用
生業扶助
就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助
葬祭費用
生活保護を受ける上でのメリット
生活保護を受けることで、以下のメリットがあります。
生活の安定
生活保護を受けることによって、最低限の生活を送るための支援が得られます。これにより、経済的な不安が軽減し、治療に専念できる環境が整います。
治療の継続が可能
医療費が免除されることで、精神科の診療や通院が継続しやすくなります。治療にかかる経済的な負担を気にすることなく、回復に向けた治療を受けることができます。
社会復帰の支援
生活保護を受けている間に、就業支援や社会復帰のためのサポートを受けることができます。生活保護を活用しながら、回復に向けたステップを踏むことが可能です。
生活保護を受ける上での疑問
自動車を持っている場合は生活保護を受けられるの?
自動車は資産となるため、原則自動車は処分しなければ、生活保護の受給とはなりません。しかし、障害を持っている方の通勤・通院手段など、自動車を保有しなければならない正当な理由がある場合は、保有を認められる可能性もあります。
働いていても生活保護は受けられるの?
前述したとおり、働いていて、就労収入がある方でも、その収入及び資産が最低限度の基準に満たない場合には、生活保護を受給することができます。この場合、収入と最低生活費を比較して、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
家や土地を持っているけど売却しなきゃいけない?
特に売却する必要はありません。生活保護は、居住している自分の家での保護を原則としているので、住むための家の所有は認められています。ただし、家や土地の処分価値(売ったらお金になる価値)がその利用価値(住む人にとっての価値)に比べて著しく高いと判断された場合は、売却を求められる場合もあります。
生活保護費の一部を貯金することは可能なの?
可能です。生活保護費を貯蓄することは認められています。自立したときに、一文無しの状態だと生活が再び困窮する可能性が高いからです。しかし、生活保護費以外の収入等を貯蓄にまわすことはできません。
住民票がある自治体でないと生活保護は受けられない?
そんなことはないです。実際に生活をしている地域の福祉事務所が管轄となります。住民票の登録とは関係なく、現在お住まいの地域の福祉事務所で生活保護申請が受けられます。
まとめ
生活保護は、精神疾患を抱えている方々にとって、生活の安定や回復を支える重要な支援です。この制度を上手に活用することで、生活の不安を軽減し、治療に専念することができます。生活保護を受けることで、安心して治療を続け、社会復帰に向けた準備をすることが可能となります。
収入がなく生活ができないなど困難な状況に直面したときには、まずはお住まいの福祉事務所に相談し、必要な支援を受けることが最初のステップとなります。生活保護を利用することで、より安心できる生活を手に入れ、回復へ向けて前進していくことができるでしょう。
参照
福祉・介護 生活保護制度
埼玉県 生活保護全般