パニック障害になりやすい人の特徴とは?性格・体質・育ち・過去の経験まで【医師監修・チェックリスト付き】

パニック障害になりやすい人のタイプや傾向を伝えるアイキャッチ画像。真面目・HSP・抱え込み型などを想起させる構成

急に強い不安や動悸に悩まされるパニック障害。「なりやすい人ってどんな人?」と気になったことはありませんか?

パニック障害になりやすい性格傾向は「心が弱いから」ではありません。 実は、性格だけでなく、「体質」や「置かれている環境」に明確な共通点があり、これらが重なったときに誰にでも起こりうる反応なのです。

本記事では、専門的な知識がなくても自分でリスクをチェックできるポイントと、安心して過ごすための実践セルフケアを紹介します。小さな気づきが、こころの負担を軽くする一歩になります。

まずは、ご自身やご家族に当てはまる特徴がないかを確認してみましょう。

最終更新日:2025年12月8日

パニック障害になりやすい人の3つの要素

パニック障害は「心の弱さ」ではなく、以下の要素が重なったときに発症しやすくなります。

✅ 性格・考え方の傾向(真面目・不安)
責任感が強く「〜すべき」と考えがちな完璧主義の方や、人一倍感受性が豊かな方(HSP傾向)。

✅ 身体的な予兆(疲労・睡眠)
慢性的な睡眠不足、自律神経の乱れ、首や肩のひどい凝りがある方。

✅ 環境の変化(20〜30代の変化期)
就職、昇進、結婚、出産など、人生の大きな変化(ライフイベント)の最中にいる方。

目次

パニック障害になりやすい人の「7つのサイン」セルフチェック

先ほど挙げた3つの要素(性格・体質・環境)は、日常の中で具体的にどのような行動や癖として現れるのでしょうか。

パニック障害の予備軍となっている方によく見られる「具体的な7つのサイン」をリストアップしました。あなたはいくつ当てはまりますか?

① 完璧主義で「〜すべき」と考えがち(性格)
責任感が強く、手を抜くのが苦手です。「完璧にやらなければ」というプレッシャーを常に自分にかけ続けているため、脳が休まる暇がありません。

② 周囲の目や評価が気になる(性格)
「人に迷惑をかけてはいけない」「変に思われたくない」という気持ちが強く、自分の感情を抑え込んでストレスを溜め込みやすい傾向があります。

音や光、気圧の変化に敏感(体質・HSP)
人混みの騒音や強い照明、天気の変化などで人一倍疲れを感じる「感覚過敏(HSP傾向)」の方は、脳が刺激過多になりやすく、発作のスイッチが入りやすい状態です。

こだわりが強く、融通が利かない(性格)
自分の決めたルールや手順通りに進まないと強い不安やイライラを感じます。予期せぬ出来事への対応がストレスになり、パニックを誘発することがあります。

⑤慢性的な疲労・睡眠不足がある(体質)
「寝ても疲れが取れない」「首や肩の凝りがひどい」状態は、自律神経がSOSを出しているサイン。身体の緊張が、心の緊張(不安発作)を引き起こします。

過去にうつやトラウマの経験がある(環境)
過去に強い恐怖体験や、うつ状態を経験したことがある場合、脳が不安に対して敏感に反応する「回路」ができやすくなっている可能性があります。

⑦20〜30代で「人生の転機」を迎えている(環境)
就職、昇進、結婚、出産など、一見おめでたい出来事であっても、生活リズムの急激な変化は脳にとって大きなストレス負荷となります。

いかがでしたか?

これらは「あなたの性格が悪い」ということではなく、「脳がオーバーヒートしやすい条件が揃っている」というサインです。

3つ以上当てはまる場合は、無意識のうちに限界を超えて頑張りすぎている可能性があります。

【性格面】完璧主義で真面目すぎる人の危険信号

「何事もきちんとやらなきゃ」と自分に厳しいタイプや、失敗を極端に恐れる人は、日々のプレッシャーが積み重なりやすい傾向があります。頑張り屋さんほど、無意識に自分を追い詰めてしまうことが多く見られます。

真面目さや責任感の強さ、感受性の豊かさは本来すばらしい特性であり、環境次第では大きな強みになります。

しかし、過度のストレスや生活要因が重なると、心身に負担となり症状につながることがあります。

大切なのは「自分の弱さ」と思い込まず、早めに専門家へ相談して適切にケアすることです。

【心理面】周りの目を気にしすぎて疲れ果てている

他人からどう見られているかを気にしすぎる人は、不安やストレスを抱えやすくなります。

特に、場の空気や人間関係を強く意識する人は、心身の緊張が抜けにくい状態が続きがちです。

【身体面】慢性的な睡眠不足と疲労が蓄積している

しっかり眠れていない、疲れが抜けない状態が続くと、自律神経(心拍・血圧・体温などを自動調節する神経システム)が乱れやすくなります。結果として、ストレス耐性も低下しやすい状態になります。

【環境面】20〜30代の人生の変化期にいる

進学・就職・結婚・出産など、人生の大きな変化が重なる時期は、パニック障害が発症しやすいタイミング。

環境が大きく変わるときは、誰でも心身が敏感になりやすいものです。

【体質面】女性に多めで、家族歴が関係することも

パニック障害は女性は男性の約2〜3倍と多い傾向があり、親や兄弟姉妹など血縁者に同じ症状を持つ人がいる場合、発症リスクが高まることが報告されています。また、体質や遺伝の影響も関係すると考えられています。

女性に多い傾向は、ホルモンの影響や社会的な役割の違いが関与すると考えられています。

さらに、家族に不安障害やパニック障害の既往があるとリスクはやや高まりますが、遺伝だけで決まるものではありません。

環境やストレス要因が重なることで発症につながるとされています。

【生活面】カフェイン過多や不規則な生活リズム

コーヒーやエナジードリンクの飲みすぎ、夜更かしや不規則な睡眠は、脳や神経に負担をかけやすくします。刺激物の取りすぎや生活リズムの乱れが、発症や悪化のきっかけになることも少なくありません。

【既往歴】うつ病・自律神経失調症の経験がある

過去にうつ病や自律神経失調症(原因不明の体調不良が続く状態)を経験している人は、パニック障害を発症しやすいといわれています。これらの疾患とパニック障害は重なりやすい特徴を持っています。

パニック障害の可能性を今すぐ確認 30秒セルフチェック

先ほどの「なりやすい性格・環境」とは別に、「現在、身体にどのような症状が出ているか」を確認するチェックリストです。

米国精神医学会などの診断基準を参考に作成した以下の項目のうち、「突然」「繰り返し」現れるものがいくつあるか数えてみてください。

7項目中3つ以上で要注意|身体症状チェック

次のような症状が「突然」「繰り返し」現れることはありませんか?

胸がドキドキして強い動悸を感じる

・息苦しさや過呼吸になったことがある

・急に汗が出たり、手足が震えたことがある

・めまい、ふらつき、気が遠くなる感じがする

・のどが詰まる感覚や、胃の不快感・吐き気がある

・強い不安や「このまま死んでしまうかも」という恐怖がある

・発作が怖くて、特定の場所(電車・人混み)を避けている

0–2:一時的なストレス反応の可能性があります。まずは生活リズムを整えましょう。
3–5:要注意。セルフケアを開始し、医療機関への相談を検討してください。
6–7:受診推奨。身体疾患の除外も含め、早めの受診が安心です。

※注意:このチェックは医療的診断ではありません。強い不安・生活への支障が続く場合は、早急にかかりつけ医や精神科にご相談ください

予期不安と回避行動の簡単判定

次のどちらかに心当たりがある場合は注意が必要です。

・「また発作が起きるのでは」と日常的に不安を感じている(予期不安

 ・電車や人混み、外出など特定の場面を避けてしまう(回避行動

日常生活への影響度を3段階で自己評価

ご自身や家族の日常生活が、パニック発作によってどの程度影響を受けているか確認してみましょう。

①ほとんど影響がない

②多少困ることがあるが、工夫して過ごせている

③発作の不安や症状で仕事・学校・外出などが大きく制限されている

2以上の状態が2〜4週間程度続く場合は、早めに医療機関への相談を検討しましょう。

【実証済み】不安を軽くする3つのセルフケア法

薬物療法と並んで効果的なのが、ご自身で行う「認知行動療法」的なアプローチです。

難しいことは必要ありません。まずは以下の3つの柱を意識するだけで、脳の過敏なアラートを鎮めることができます。

3つのセルフケア実践メソッド

生活習慣リセット術 睡眠・呼吸・カフェイン制限で、身体の緊張を強制的にオフにする。

安心感構築メソッド 「いざという時の逃げ場・グッズ」を用意し、脳に安全宣言を出す。

段階的慣らしメソッド 苦手な場所(電車など)に、スモールステップで少しずつ脳を慣れさせる。

生活習慣リセット術(睡眠・呼吸・食事の整え方)

毎日の睡眠リズムを整え、できるだけ決まった時間に寝起きしましょう。

寝る前のスマホやカフェインを控え、軽いストレッチや深呼吸でリラックスする習慣が効果的です。

バランスの良い食事も自律神経を安定させるポイントになります。
 

今日からの3つ

①就寝90分前は画面オフ/入浴→軽いストレッチ 

②4-4-6呼吸を1日3セット

③カフェインは午後は控えめ/水分をこまめに

安心感構築メソッド(人・場所・物の確保法)

安心できる人や場所をあらかじめ決めておき、発作が起きそうなときは無理をせず頼れるようにしましょう。

お守りやアロマなど、気持ちが落ち着くアイテムを持ち歩くのもおすすめです。

自分の「安心グッズ」を見つけることが、不安を和らげる助けになります。

今日からの3つ
①連絡先“安心リスト”をスマホに作る 

②落ち着く場所候補を2つ決めておく 

③ミントタブレットや小物など“安心グッズ”を持つ

段階的慣らしメソッド(電車・人混みの克服法)

苦手な場所や状況に、一気に慣れようとせず、少しずつ段階を踏んで慣らしていきましょう。

例えば、最初は駅のホームまで行くだけ、慣れたら電車に短時間乗ってみる…といったふうに、無理のないペースで取り組むことが大切です。

うまくいかない日があっても、焦らず続けてみましょう。

今日からの3つ
①“見るだけ”→“近づく”→“短時間滞在”→“延長”の4段階表を作る

②成功の最小目標を毎回1つ

③不調日は休んで翌日に再開

受診のタイミングと病院選び|失敗しない医師との付き合い方

受診のタイミングについても確認しておきましょう。

「今すぐ受診」すべき3つの警告サイン

1.発作が繰り返し起こり、日常生活に支障をきたしている

2.強い動悸や息切れが長時間続く、または意識を失いそうになる

3.不安や症状で、外出や仕事・学校に行けなくなった

これらに当てはまる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

診察で医師に伝える4つの必須情報

メモして持参すると、スムーズに診察を受けられます。

・発作の回数やタイミング、場所、持続時間

・現れる症状(動悸・息切れ・めまいなど)

・これまでに行った対処法や服薬歴

生活への影響や困っていること

症状別の受診ルート|強い動悸が続く→内科で除外→主治医と継続ケア

まず、胸の痛みや強い動悸が長く続く場合は、心臓や甲状腺など身体的な病気を除外するため、内科循環器科で検査を受けましょう。

重大な異常がなければ、心療内科や精神科を受診する流れが安心です。

よくある質問と不安解消法|家族や職場の悩みも解決

パニック障害に関するよくある質問にお答えします。

「薬に頼らず治したい」は可能?自然治癒の現実

生活習慣の改善やセルフケアで症状が落ち着くこともありますが、薬物療法が必要な場合も多くあります。

症状が長引いたり生活に支障が出る場合は、医師と相談しながら治療を進めましょう。

無理に我慢せず、必要に応じて専門家のサポートを受けるのが安全です。

家族や職場にはどう伝える?タイミングと言葉選び

信頼できる人に、困っていることを率直に伝えましょう。

家族や職場の方に話すときは、「こういう症状で困っている」「今できること・できないこと」を具体的に伝えるのがコツです。

落ち着いて話せるタイミングを選び、無理に全部を話さなくても大丈夫です。

過呼吸や甲状腺・心疾患との違いは?受診の目安は?

まず内科で身体的な異常がないかを確認しましょう。

パニック障害の発作は、心臓や甲状腺など他の病気と似た症状もあります。

強い動悸や息切れが続く場合は、早めの受診が安心です。

再発を防ぐには?長期的なメンテナンス方法

規則正しい生活とセルフケアの継続が再発予防のポイントです。日常のリズムを崩さず、ストレスを溜めすぎないことが大切です。調子が悪いと感じたら早めに対処しましょう。

【保存版】パニック障害の特徴とセルフチェックまとめ

パニック障害になりやすい人は、その真面目さゆえに「自分で治さなきゃ」と頑張りすぎてしまう傾向があります。

しかし、パニック障害は気合で治すものではなく、適切な「脳の休息」と「調整」が必要な身体の反応です。

今回ご紹介したセルフチェックで「あてはまるな」と感じたり、セルフケアだけでは不安が拭えない場合は、どうぞ遠慮なく専門家を頼ってください。

不安や症状をひとりで抱え続ける必要はありません。 「少し気になるな」と思ったその瞬間が、受診のタイミングかもしれません。

どうぞお気軽にご相談ください。 

※症状・診断・治療の基礎はこちらをお読みください。

【免責事項】
本記事は医療機関による情報提供を目的としており、個別の診断・治療を代行するものではありません。
ご自身の症状については、必ず医師・医療機関にご相談ください。

本記事の内容は以下の公的機関・専門サイトを参考にしています。詳細を知りたい方は原典をご確認ください。

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)こころの情報サイト
 パニック障害の症状や治療法についての公的な解説。
 https://www.ncnp.go.jp/hospital/panic.html

NCNP「パニック障害」総論ページ
 パニック障害に関する基礎情報。
 https://www.ncnp.go.jp/hospital/anxiety.html

MSDマニュアル(日本語版・専門家向け)
 パニック障害の診断・疫学・治療についての国際的な解説。
 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/psychiatric-disorders/anxiety-and-stressor-related-disorders/panic-disorder

・学会誌・医学データベース(J-STAGE, PubMed)掲載のレビュー論文
 パニック障害の有病率・性差・治療エビデンスに関する学術的知見。

最終更新日:2025年12月8日

【この記事の監修医】
 今雪 宏崇
(精神科医・川口メンタルクリニック院長)

精神科専門医。地域のメンタルヘルス支援に携わる。
外来診療に加え、訪問診療にも注力し、通院が難しい方へのサポートも行っている。

▶ 詳しいプロフィールは 院長紹介ページ をご覧ください。

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