【強迫性障害】「何度も確認」を確実に減らすには?|写真記録・2回ルールと家族のNGワード

「鍵はOK。ガスの元栓も閉めた」

確認したはずなのに、すぐ不安になる。 実は、その「安心するための確認」こそが、逆に脳の不安回路を強化する原因でした。

必要なのは根性論ではなく、脳の誤作動を止めるテクニックです。

この記事では精神科医監修のもと、写真記録・2回ルール」といった具体的な対処法と、家族の「言ってはいけない言葉」を徹底解説します。

目次

なぜ止まらない?「確認しすぎる」を繰り返す心のメカニズム

確認行為は「不安を減らすための衝動」であり、本人の意志だけでは止めにくい脳のクセです。

強迫性障害(OCD)では恐怖を感じる場面を避けたり、確認を繰り返したりすることで一時的に安心しますが、長期的には不安が強まりループが固定化します。

背景にはセロトニン系の機能低下完璧主義的思考が関与していると考えられています。

単なる心配性じゃない?日常に潜む「強迫性障害の初期症状」チェックリスト

次のような行動が「やりすぎだ」と自覚しているのに止められず、時間や生活に支障が出ている場合は強迫性障害(OCD)の可能性があります。

外出時の確認が止まらない
ドアの鍵、ガスの元栓、窓の施錠などを、「閉めたはず」とわかっているのに何度もガチャガチャと確認してしまう。

「もしも」の不安が消えない
「万が一火事になったら」「泥棒に入られたら」という最悪のイメージが頭から離れず、外出先から家に戻ってしまうことがある。

他人を巻き込んでしまう
自分ひとりの確認では安心できず、家族に「鍵かけたよね?」と何度も同意を求めてしまう。

なぜ「確認」するほど不安が増すの?

「さっき見たはずなのに、記憶に自信がない」 これはあなたの記憶力が悪いからではありません。実は、確認すればするほど、脳の記憶は「ゲシュタルト崩壊」を起こし、曖昧になっていく性質があります。

1回目: 「鍵をかけた」という鮮明な記憶がある。

10回目: 「かけた記憶」と「確認した記憶」が混ざり合い、「今さっき閉まっていたか?」がわからなくなる。

つまり、安心を得ようとして繰り返す「確認」こそが、逆に「不安」を強化し、次の確認を呼ぶ原因になっているのです。

この「不安の悪循環」を断ち切るには、意思の力ではなく、脳の誤作動をスルーする「技術」が必要です。

【対処法】確認地獄から抜け出すテクニックとルール

精神論で我慢するのは逆効果です。物理的な証拠とルールで、脳を納得させましょう。

この章のポイント

①「記憶」ではなく「記録」に残す(スマホ活用)

②「2回ルール」でハードルを下げる

③ 不安が出ても「10分待つ」トレーニング

「記憶」ではなく「記録」に残す(スマホ活用)

自分の記憶が信じられない時は、客観的な「データ」を味方につけます。

  • 指差呼称して撮影する: ただ撮るのではなく、鍵を指差して「よし!」と言いながら動画や写真を撮ります。
  • 不安になったら「画像」を見る: 家に戻る代わりに、スマホの画像を確認してください。「画像にある=閉まっている」という事実は、どんなに不安でも揺らぎません。
  • 家に着いたら画像を消す: 帰宅して安全を確認したら、その日の画像は削除します。「記録があれば大丈夫」という成功体験を脳に覚え込ませましょう。

「2回ルール」でハードルを下げる

いきなり「確認ゼロ」を目指すと、反動で不安が爆発します。まずは現実的な「2回ルール」を導入しましょう。

1回目: 通常の確認(OK)

2回目: 念のための確認(ここまでOK)

3回目: 「ここからは病気の症状」と割り切る(NG)

3回目の確認をしそうになったら、

これは安全確認ではなく、強迫性障害の『儀式』だ

と自覚しましょう。

不安が出ても「10分待つ」トレーニング

確認したい衝動に襲われた時、すぐに動かず「まずは10分だけ我慢する」というルールです。

不安のピークをやり過ごす
強迫的な不安は、波のように押し寄せますが、ずっとは続きません。10分〜30分経つと、ピークが過ぎて少し楽になる瞬間が来ます。

別のことに集中する
その10分の間、スマホゲームでも音楽でも何でも良いので、意識を別に逸らします。

「確認しなくても、最悪の事態(火事や泥棒)は起きなかった」という経験を積み重ねることで、脳の過剰なアラートは徐々に静まっていきます。

【ご家族向け】「何度も確認」の回復を早める接し方とNGワード

ご家族にとって、何度も同じ確認に付き合わされるのは大きなストレスです。しかし、叱咤激励や理詰めでの説得は、残念ながら逆効果になってしまいます。

「性格」ではなく「症状」として扱う

ご本人は、好きで確認しているわけではありません。「確認しないと恐ろしいことが起きる」という脳の誤作動に追い詰められています。

「だらしない」「気にしすぎ」と性格を責めるのではなく、「今は強迫の症状が出ているんだね」と、病気の症状として切り離して見てあげてください。

やってはいけない「巻き込み」への対応

「鍵かけたよね?」「大丈夫だよね?」と同意を求められた時、「大丈夫だよ」「もう済んでるよ」と安心させてあげるのは、実は長期的にはNGな対応です。

ご家族にとっても「あえて安心させない」のは辛いことですが、これを繰り返すと、ご本人は「家族に聞けば安心できる」と依存してしまい(巻き込み・Accommodation)、自分の力で不安を処理できなくなってしまいます。

・✖NG
「さっき見たでしょ、大丈夫だよ」(確認の代行)

〇 OK
「確認は1回ですんでいるよ」「もう十分確認したから、あとは待ってみよう」(事実だけ伝える)

本人の『治る力』を信じて、「あえて応えない」ことも、本質的なサポートのひとつです。

【一覧表】家族のNGワードとOKな言い換え

良かれと思ってかけた言葉が、プレッシャーになることがあります。

NG(言ってはいけない言葉)NG理由OKの言い換え・対応
「さっき見たでしょ、大丈夫だよ」
(安心の保証)
一時的に安心するが「自分では判断できない」という無力感が強まり、すぐにまた聞きたくなる「確認はさっき1回したよね」
(事実だけを伝える)
※「大丈夫」とは言わない。
「見てきてあげようか?」
(確認の代行)
代わりに確認すると、本人の「不安に耐える練習」の機会を奪ってしまう「私の確認は、あなたのためにならないからしないよ」
(愛情を持って断る)
「いい加減にして!早くして!」
(叱責・急かす)
プレッシャーがかかると脳がパニックになり、余計に記憶が飛んで確認回数が増える「出発まであと5分待つね」
(時間を区切って見守る)
※待っている間はスマホを見るなど、監視しない姿勢で。
「そんなこと気にしなくていい」
(否定・精神論)
本人も頭では「無意味だ」とわかっているため、指摘されると「分かってもらえない」と孤立する脳が誤作動(エラー)を起こしているよ(症状の客観視)
※本人と病気を切り離して表現。
「いつになったら治るの?」
(焦らせる)
確認行為をゼロにしようと焦り、隠れて確認するようになるリスク「昨日は戻らずに出かけられたね」
(小さな進歩を承認する)
※ゼロを目指さず、減ったことを認める

ひとりで治せない時は?専門的な治療(薬・認知行動療法)

セルフケア(写真記録や2回ルール)を試しても、「どうしても確認が止まらない」「生活に支障が出ている」という場合は、専門的な治療を検討しましょう。

薬物療法:脳の過敏さを調整する

強迫性障害は、脳内の神経伝達物質(セロトニン)のバランスが崩れていることが一因です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬を使用し、脳の過敏なアラートを調整します。

「薬に頼りたくない」という方もいますが、まずは薬で不安の波を小さくしてから行動療法を行うと、スムーズに改善するケースが多くあります。

精神療法:認知行動療法(暴露反応妨害法)

あえて不安な状況に身を置き、「確認しない」まま我慢する練習です。

「確認しなくても、恐れていることは起きなかった」という体験を脳に学習させます。専門家の指導のもと、スモールステップで進めていきます。

まとめ:その「気になる」をひとりで抱え込まないために

「何度も確認してしまう」

それは、あなたが慎重すぎるわけでも、心が弱いわけでもありません。脳の信号が少し誤作動を起こしているだけです。

仕組みを知る: 確認するほど記憶は曖昧になる。

技術を使う: 写真記録や「2回ルール」で脳をスルーする。

周囲が支える: 家族は「症状」と「本人」を分けて接する。

この3つで、症状は確実に軽くしていくことができます。

もし、ご自身やご家族だけで抱えきれない時は、私たち専門家を頼ってください。出口は必ずあります。

参考・出典
※1 国立精神・神経医療研究センター「精神疾患の基礎知識 — 不安を特徴とする精神疾患群」(2024)
※2 厚生労働省「令和2年(2020)患者調査」
(統計引用行:12か月有病率1.2%・平均発症年齢19〜20歳・25%は14歳以前 → PDFL8/推計患者数124万人・男女内訳 → PDFL0

厚労省「強迫性障害の認知行動療法マニュアル(治療者用)」
MSDマニュアル プロフェッショナル版
NICE Guideline CG31—OCDの評価・治療、家族支援
こころの情報サイト 強迫性障害

【この記事の監修医】
 今雪 宏崇
(精神科医・川口メンタルクリニック院長)

精神科専門医。地域のメンタルヘルス支援に携わる。
外来診療に加え、訪問診療にも注力し、通院が難しい方へのサポートも行っている。

▶ 詳しいプロフィールは 院長紹介ページ をご覧ください。


最終更新日:2025年12月9日

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