統合失調症の代表的な症状は?家族の対応方法と共に解説

統合失調症とは、うつ病や双極性障害と並んで精神疾患の代表的な疾患です。

幻覚や妄想といった症状が出るため、社会生活が困難になる方もいます。

しかし、現在は新しい薬が開発されて社会的・心理的ケアも進歩したことにより、患者さんの多くが長期的な回復が見込めるようになりました。

しかし、統合失調症は自然治癒が困難な病気でもあります。

統合失調症が疑われる症状が出た場合は、速やかに精神科を受診することが大切です。

この記事では統合失調症の代表的な症状や、家族が発症を疑われる場合の対処法などを解説します。

目次

統合失調症とはどのような症状が出る病気?

統合失調症はうつ病や双極性障害同様、誰もが発症する可能性がある心の病気です。

厚生労働省が発表した「精神疾患を有する総患者数の推移」によると、平成29年に精神科に通院する統合失調症の患者さんは約64万人、入院している患者さんは約15万人となっています。

100人に1人が発症するといわれているように、決して珍しい病気ではありません。

発症年齢は10代後半~20代後半がピークとされており、女性の発症年齢のほうが男性よりもやや遅い傾向です。

脳内の神経伝達物質の異常が発症原因の一つであることが判明しており、遺伝の傾向もありますが、まだ発症原因は完全に解明されていません。

ここでは、統合失調症の主な症状を解説します。

「幻覚・妄想」(陽性症状)

統合失調症の症状は大きく分けて「陽性症状」と「陰性症状」があります。

陽性症状の代表的な症状は、幻覚や妄想です。

幻覚とは実際には存在しないものが見えたり聞こえたりする症状の総称ですが、統合失調症の場合は聴覚への幻覚(幻聴)が多くみられます。

「誰もいないのに声が聞こえる」「テレビやラジオから自分へ語りかける声が聞こえる」といった症状で、病院を受診される方もいらっしゃいます。

妄想とは、現実ではありえない症状を事実と思い込んでしまう症状です。

妄想には関係ないものを関係があると思い込む「関係妄想」、知らない人が自分へ危害を加えようとしている「被害妄想」、自分が監視されているなどの「注意妄想」などがあり。周りが訂正しても受け入れられません。

このほか、自分と他人の境界線があいまいになり「自分は誰かに支配されている」と感じる「自我の障害」や考えがうまくまとまらない「思考の障害」が出る患者さんもいます。

思考の障害が出ると言語が支離滅裂となり、周りの人との会話が成り立たなくなる場合もあるでしょう。

患者さんは自分の考えが周囲に伝わらない苛立ちを常に抱えることになり、急に大声で叫びだすなどの異常行動が現れることもあります。

「感情の障害と意欲の低下」(陰性症状)

陰性症状の代表的な症状としては、喜怒哀楽といった感情が乏しくなる感情障害や意欲の低下があります。

陰性症状が強く出ると感情の表し方そのものを忘れてしまい、周りで何があっても無感動、無感情になることもあるでしょう。

また、意欲が低下すると仕事や家事、勉強だけでなく、入浴や洗面、着替えなど身だしなみを整えることも難しくなります。

人とのかかわりを避け、1日中家に閉じこもってぼんやりと過ごす患者さんもいます。

陰性症状が強く出ると統合失調症と認識されず、「怠けている」「やる気がない」などと周囲が決めつけてしまい、患者さんが自分を責めてしまうケースもあるでしょう。

統合失調症の治療方法

統合失調症は、昔からさまざまな治療法が行われてきました。

かつては効果が乏しかったり医学的な根拠が薄かったりするものもありましたが、現在、病院で行われている治療は継続すれば多くの患者さんに症状の改善が見込まれます。

ここでは、統合失調症の治療方法について解説します。

自然治癒は大変困難

統合失調症の自然治癒は大変困難です。

統合失調症の症状は「前兆期」「急性期」「回復期」「安定・慢性期」があり、時間が経過すると改善したように見えるケースもあります。

しかし、適切な治療を行わないと再び陽性症状が激しくなったり、逆に陰性症状が強く出て社会生活が送れなくなったりします。

統合失調症が疑われる場合は、できる限り早く精神科を受診してください。

なお、統合失調症の診断基準は典型的な症状が1か月は続き、何らかの症状が6カ月以上持続することです。

妄想や幻覚が症状として現れる病気は統合失調症以外にもあります。

適切な治療を受けるためにも早期受診は大切です。

早期治療が重要

統合失調症の治療は、投薬治療と心理社会的な治療を組み合わせて行います。

症状の出方によっては一定期間の入院が必要になることもあるでしょう。

統合失調症の治療に用いられる抗精神病薬にはたくさんの種類があり、患者さん1人1人に適した薬の種類や量が異なります。

また、適した薬に出会うまでにある程度の試行錯誤が必要です。

症状が落ち着いたらリハビリテーションや生活機能訓練、作業療法といった心理社会的な治療も行っていきます。

統合失調症の患者さんは生きづらさを抱えやすく、生活の質も低下しがちな傾向です。

リハビリテーションでは生活の質や生きる意欲の回復を目指します。

また、生活機能訓練では対人関係やコミュニケーションにおける問題の解決を図り、作業療法で家事や仕事などの社会生活を再び送れるように訓練を行います。

統合失調症は投薬治療と心理的な治療の両方を適切に行っていくことが大切であり、早期治療を行うほど予後が良好な傾向です。

家族が統合失調症かもしれないと思ったら?

統合失調症の陽性症状が出ると、患者さん本人が適切な判断ができなくなります。

このような場合、家族の協力が不可欠です。

これまでご紹介してきたような統合失調症を疑われる症状が家族に現れた場合の対処法を解説します。

病院への受診を促す

患者さんの中には、社会生活を送るのが困難になっている場合も珍しくありません。

家族が病院を探し、受診させるなど医療と患者さんをつなげてください。

最寄りの保健所や精神保健福祉センターでも相談を受け付けていますので、「病院がどこにあるのかもわからない」といった場合にも利用してみましょう。

陽性症状が激しい場合は救急車精神科救急入院可施設に受け入れを要請することも可能です。

患者さんを前向きに受け入れる

統合失調症は適切な治療を受ければ社会復帰が十分に可能です。

また、統合失調症は誰でも発症する可能性があり、本人の心の持ちようは関係ありません。

発症の年齢のピークが10代後半~20代前半であることから、家族のサポートが患者さんの治療に欠かせないケースもあります。

家族が統合失調症を発症した場合は、投薬の管理を行ったり共に治療の効果を確かめたりするなど、寄り添う姿勢を見せてあげましょう。

患者さん本人を否定したり病気になったことを責めたりしてはいけません。

【まとめ】

統合失調症は、早期治療と家族のサポートが症状改善の重要なポイントです。

また、統合失調症は患者さん1人1人に適した治療法が異なるため、治療法が定まり、症状が改善するまでに時間がかかるケースもあるでしょう。

しかし、適切な治療を受ければ多くの患者さんが症状を改善できます。

統合失調症が疑われる症状が現れた場合、家族も協力してまず精神科を受診してください。

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